食品と死亡率との関係をやさしく解説
今回は12種類の食品群(全粒穀・精製穀・野菜・フルーツ・ナッツ・豆類・卵・乳製品・魚・赤肉・加工肉・砂糖入り飲料)と全死亡(あらゆる原因による死亡)のと関係を調査した論文(Schwingshackl ら, Am J Clin Nutr 2017)をご紹介します。
この論文は世界中で行われた前向きコホート研究(ある時点から将来に起きる事象(今回は死亡)を追いかける観察研究)を系統的に集めて、各食品群の死亡率との関係をまとめています。より最近の論文でも似たような報告はありますが、私の知る限り我々が普段口にする代表的な食品を広く対象として視覚的に分かりやすくまとめた論文が他に出てこないため少し古い論文となりますがご紹介します。
この論文のポイントは「食べる量が増えるほど死亡リスクがどう動くか(用量–反応関係)」まで調べていることです。
各食品群のポイント(g/日のおおよその範囲)
- 全粒穀物(玄米・雑穀・全粒粉パン・オートミール)
曲線は増やすほど低下が続き、少なくとも〜100 g/日までは一貫して死亡率が低下。

主食の一部を全粒に置き換えるほどメリットが積み上がる可能性があります。例:全粒粉パン1枚(30–40 g)、オートミール乾40 g など
- 豆類(大豆・レンズ豆・ひよこ豆等)
〜150 g/日超まで“食べるほど低下”の下向きカーブ。缶豆や納豆・蒸し大豆の活用がおすすめ。

例)ゆで豆100g+納豆1パック=約150g
- 魚
〜250 g/日までは“食べるほど低下”。和食の主菜を魚にする頻度を増やすと反映されやすい。

例)切り身1切れ=約100g、さば缶詰1缶=約150g
- 野菜
〜300 g/日くらいまでは明確に低下、その先は横ばい(追加の恩恵は小さめ)。色の異なる野菜を毎食少しずつ。

例)生野菜サラダ両手1杯約80g+煮物小鉢1つ分約100gなどで合計300gを目安
- ナッツ(無塩・素焼き)
〜15–20 g/日で低下が顕著、それ以上は横ばい。おやつをナッツに置き換えるのが効率的。

例)アーモンド約20~30粒で約30g。→ひと掴みの半分~2/3が約15~20g
- 精製穀物(白米・白パン・白パスタ等)
少量(〜50–75 g/日)でやや低下も、そこからは横ばい〜上昇に向かう“U字〜右上がり”。最近掲載したコラムでもご紹介したように、白米は多く食べるとジャガイモより2型糖尿病発症リスクを高めてしまう可能性があり控えめに食べるのが良さそうです。主食はできるたけ全粒(玄米など)>精製にシフトを。

- 卵
少量(〜1/2個/日相当, 20–30 g)で最も低く、1個/日を超えると上昇傾向が見えます。全体の食生活バランスの中で調整が必要。

特にコレステロールの高い方は週3個くらいまでが適量の目安になります。
- フルーツ
〜300–400 g/日で低下が頭打ちに近づき、その先は横ばい〜わずかに反転。毎日1–2回のフルーツが現実的。
例:みかん2個=約200 g、りんご小1個=150 g

ただし、最近の日本のフルーツは“甘い品種”が主役になり糖度(果糖の含有量)が高いため肥満傾向の方は控えめの摂取が安心。
| 果物 | 食べごろ月 | 糖度目安(°Bx) | 主な名産地(市町村例) | 備考 |
| もも (あかつき等) | 7–9月(早生は6月末〜) | 12–14(条件良で16+) | 福島市/桑折町/伊達市/二本松市/本宮市 | 県を代表する果樹。品種で時期がずれる(あかつき、川中島白桃など)。 |
| 日本なし (幸水・豊水 等) | 8–10月 | 12–13 | 郡山市(安積・日和田)/福島市/須賀川市/いわき市 | 品種により前半(幸水)と後半(豊水)でピークが分かれる。 |
| ぶどう (シャインマスカット) | 8–10月 | 17–20 | 福島市/伊達市/郡山市/会津若松市 | 皮ごと食べられる高糖度品種。県内各地で作付け拡大。 |
| 柿(生食) | 10–11月 | 17–18 | 伊達市/国見町 | 渋抜きの品種も多い。 |
| あんぽ柿 (干し柿) | 12–2月(出荷は11月〜) | 30 | 伊達市(梁川・保原) | 福島名産。独特の半生食感で非常に高糖度。 |
| りんご (ふじ・ジョナ等) | 9–12月(貯蔵で〜2月) | 12–14(ふじ14–16) | 福島市/伊達市/会津若松市/国見町 | 品種で時期が大きく異なる。 |
少し難しい話になりますが、進化生理学的「果糖・サバイバル仮説」についても説明します。
進化の過程で、我々含め生き物は飢えや脱水に備える必要があり、果糖は体に「省エネして脂肪をためておこう」という合図を出す――そんな非常時モードのスイッチの役目を果たしていた、という考え方です。
ところが現代は、果糖(果汁と表記されている場合もあり注意が必要)甘い飲み物やお菓子が身の回りにたくさん。
このスイッチが入りっぱなしになりやすく、太りやすさ・脂肪肝・2型糖尿病・高尿酸血症・高血圧・認知機能の低下・肥満に関連するがん・老化の促進などにつながる可能性がある、とされています。
要するに——果糖は“今すぐ燃やすエネルギー”というより「非常時に脂肪をためる合図」。その合図が現代の食環境で過剰に作動している、という仮説です。(出典:Johnson RJ ほか, 2023, Phil. Trans. R. Soc. B)
- 乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)
中等量(概ね200–400 g/日相当)で最も低く、多すぎると上昇方向に転じる“U字”カーブ。甘い乳飲料は別扱いで。

特にコレステロールの高い方は1日200g以下に留めるか、それ以上多く摂取する場合はゼロ脂肪のものを選ぶと安心。
- 赤肉(牛・豚・羊の“赤い肉”)
食べるほど直線的に上昇。100 g/日増えるごとに約+10〜20%のリスク上昇が推計されています。頻度と量のコントロールを。

- 加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ等)
食べるほど直線的に上昇。50 g/日増で約+20%の上昇。日常使いを“ときどき”に。

- 砂糖入り飲料(清涼飲料・加糖コーヒー/紅茶等)
飲むほど上昇。250 mL/日増で約+7%の上昇が報告されています。基本は水・無糖茶へ。

一言でいうと
- 増やすと良い傾向の食品(1日1人前増えるごとに死亡リスク↓)
- 全粒穀:約8%低下(例:全粒粉パン、オートミール)
- 野菜:約4%低下
- フルーツ:約6%低下
- ナッツ:約24%低下(ひとつかみ程度)
- 魚:約7%低下
※1人前の量は研究により異なります(パン1枚、フルーツ1個、ナッツ約28gなどの目安)
- 減らすほど良い傾向の食品
- 赤肉:1人前ごとに約10〜20%上昇
- 加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコン等):1人前ごとに約20%上昇。頻度は控えめに。
- ほどほどで十分な食品
- 野菜・フルーツ・ナッツ・乳製品は中等量で最も低リスクになりやすい。
どう行動に落とし込む?
毎日完璧にする必要はなく、不健康な食生活が習慣化しないように心がけましょう。「置き換え」と「頻度」を意識するだけで、食事の“総合点”は上がります。
- 主食を“精製”から“全粒”へ置き換え
白米だけの日は、週に数回は雑穀米・胚芽米やオートミール、全粒粉パンに。 - “彩り3品”ルールで野菜とフルーツを確保
食事ごとに緑・赤・橙の3色を意識(生・加熱・汁物など形は自由)。フルーツは1個/日程度を目安に。ただし太り気味の方は糖度の高いフルーツは控えめに。 - ナッツを“おやつの定番”に
素焼きのミックスナッツをひとつかみ(食塩・砂糖・衣なし)。 - “魚の回数”を増やす
焼き魚・刺身・缶詰(さば・いわし水煮)を積極活用。ランチを魚に置き換えると続けやすい。 - 赤肉・加工肉は“量と頻度”を控えめに
ベーコン増量・ソーセージの“つい足し”をやめ、ハムはたまに。主菜は鶏肉・魚・豆製品に振り替え。 - 乳製品は“ほどほど”
ヨーグルト/牛乳は中等量を継続。甘い乳飲料は控えめに。
よくある質問
Q. これで「因果関係」が証明されたの?
A. いいえ。これは観察研究の統合で、生活習慣や体質などの影響を完全には消せません。ただし、他の大規模研究でも一貫した傾向が確認されており、健康的な食事パターン(長寿と関係する地中海食や和食に近い構成)と整合的です。
治療中の疾患や体質により最適解は変わるため、個別にご相談ください。
まとめ(当クリニックの実践ポイント)
- “全粒・野菜・フルーツ・ナッツ・魚を増やす/赤肉・加工肉を減らす”が王道。
- 極端より継続。「置き換え」と「頻度」をコツコツ。
- 迷ったら“素材に近い食品”を選ぶ。(加工が少ないほど無難)
出典:Schwingshackl L, et al. Am J Clin Nutr. 2017;105:1462-1473.(前向き研究の系統的レビュー&メタ解析)
※本コラムは一般的な健康情報です。腎臓病、通風、高脂血症、食物アレルギー、妊娠中などの方は、個別調整が必要になることがあります。
当クリニックの管理栄養士にご相談ください。栄養支援ご希望の方はお気軽にスタッフにお声がけ下さい。
(文責:杉本一博)