本当に「緩くて大丈夫」?日本のコレステロール管理
最近、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の目標値について、
日本と欧州で違いがあることが知られるようになってきました。
実は――
👉 日本のガイドラインは、欧州よりも目標がやや緩やか
に設定されています。

なぜ日本は「緩やか」なの?
理由としてよく説明されるのは、
- 日本人は欧米人に比べて心筋梗塞などの心血管疾患が少なかった
- そのため同じコレステロール値でも、病気のリスクが低いと考えられてきた
という背景です。
確かに、昔の日本ではその通りでした。
でも、今の日本はどうでしょう?
近年、日本でも次のような変化が起きています。
- 食生活の欧米化
- 運動不足
- 肥満・糖尿病の増加
- 高齢化の進行
その結果――
👉 日本人でも、LDLコレステロールが高いほど、心血管リスクを高める
ことが、国内の研究でも報告されています。
(例:地域住民コホート(CIRCS)では、LDL-Cがおよそ80〜200 mg/dLの範囲で冠動脈疾患リスクと正の関連が示されています:ImanoH. et al. Prev Med. 2011;52(5):381-6)

つまり
「日本人だから安心」
「欧州ほど厳しくしなくてよい」
とは、必ずしも言えなくなってきているのです。
欧州が「より厳しく」管理する理由
欧州のガイドラインでは、
- 心筋梗塞や脳卒中などの脳血管疾患を起こしたことがある方
- 糖尿病や腎臓病がある方
- 動脈硬化がすでに進んでいる方
には、
👉 LDLコレステロールを 55 mg/dL 未満
という かなり厳しい目標を勧めています。
理由はシンプルです。
LDLコレステロールは、下げれば下げるほど
心臓や脳の病気が減ることが、世界中の研究で確かめられている
からです。
この効果は、欧米人だけでなく、日本人でも同じ方向性であることが分かっています。
日本の「緩やかな目標」は間違い?
必ずしも、そうとは言い切れないところもあります。
日本のガイドラインは、
- 高騰する医療費とのバランス
- 日本人データの蓄積状況
- 一律に厳しくすると、治療が行き過ぎる可能性
などを考えて、
「まずは現実的な目標」として設定されています。
ただし――
👉 「緩やか=安全」ではない
👉 「そこまで下げなくても大丈夫」と決めつけるのは危険
という点は、ぜひ知っておいていただきたいのです。
大切なのは「あなたのリスク」
最近の考え方で最も大切なのは、
コレステロール管理は、みんな同じでよいわけではない
ということです。
- 心筋梗塞や脳卒中の経験がある
- 糖尿病・腎臓病がある
- 家族に若くして心臓病になった人がいる
- 検査で動脈硬化が見つかっている
こうした方では、
👉 日本の目標より、さらに厳しく下げた方が安全な場合があります。
お薬をしっかり使うことは「やりすぎ」ではありません
「そこまで下げなくてもいいのでは?」
「薬が増えるのは不安」
そう感じるのは自然なことです。
しかし、リスクが高い方にとっては、
- 生活習慣の改善 +
- 適切な薬物治療
が、将来の心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を防ぐ“保険”になります。
まとめ
【日本のコレステロール管理で大切なこと】
- 日本の目標は欧州より緩やか
- しかし 日本人でもLDLコレステロールは確実にリスクを上げる
- 「日本人だから安心」とは言えない時代
- 自分のリスクに応じて、より厳格な管理が必要な人もいる
当クリニックからのメッセージ
日本のガイドラインは大切な指針ですが、
それが「あなたにとっての最適解」とは限りません。
私たちは、日本と欧州、両方のエビデンスを踏まえ、
あなたにとって一番安全なコレステロール管理を一緒に考えます。
(文責:すぎもと内科・糖尿病内科クリニック杉本一博)