【論文掲載】糖尿病スティグマ研究のお知らせ
糖尿病と「スティグマ(偏見)」に関する研究が国際誌 Medicine に掲載されました
このたび、当クリニック院長が責任著者を務めた研究論文が、国際医学雑誌 Medicine に掲載されました。
本研究では、糖尿病とともに生きる方が日常生活の中で感じる「スティグマ(偏見や差別)」について、郡山市にある太田西ノ内病院糖尿病内科外来に通院中の方を対象に調査を行いました。
■ スティグマとは?
「スティグマ」とは、病気に対する誤解や偏見によって、周囲から不当な扱いを受けたり、心理的な負担を感じたりすることを指します。
糖尿病では、
・「自己管理ができていない病気」
・「生活習慣の問題だけで起こる病気」
といった誤解が、糖尿病とともに生きる方の心や社会生活に影響を与えることがあります。
🧠 糖尿病の誤解と医学的事実
※正しい知識が広がることが、偏見を減らす第一歩です
| ❌ よくある誤解(スティグマ) | ✔ 医学的事実 |
| 自己管理ができていないからなる | 遺伝・体質・環境など複数の要因が関与する病気 |
| 食べすぎ・怠けが原因 | 収入・教育・食へのアクセスなど社会的要因も大きく健康に関与 |
| 本人の努力不足 | 不適切な治療や治療の遅れ(クリニカル・イナーシャ)によっても進行することがある |
| インスリン=重症・終わり | 早期から使用することで合併症予防につながる |
| 薬が増える=悪化 | より適切な治療へ調整されている可能性 |
| 糖尿病=不健康な人 | 適切な管理により健康的な生活が可能 |
■ 研究の概要
・対象:太田西ノ内病院糖尿病内科外来通院者114名
・方法:アンケート調査(対面)
・調査内容:
・社会生活への影響
・偏見や差別の経験
・スティグマや啓発活動の認知度
■ 主な結果(重要ポイント)
① スティグマの経験は約1〜2割
・社会生活への影響を感じた方:19.3%
・偏見や差別を経験した方:14.0%
👉 海外研究と比較すると低い結果でした
② 若い方・治療が複雑な方で多い
・65歳未満の方で多い
・使用薬剤数が多い方で多い
👉 若年層+多剤併用で影響を受けやすい傾向が示されました
③ 「職場」で起こりやすい
・就職・昇進・職場環境での経験が多い
👉 社会的理解の重要性が示唆されました
④ 認知度は極めて低い
・「糖尿病スティグマ」という言葉:ほぼ認知なし
・啓発活動:ほぼ認知なし
👉 「知られていないこと」自体が大きな課題です
■ この研究から分かること
✔ 日本ではスティグマの報告は比較的少ない
👉 しかし
✔ 表面に出にくく、実際より少なく見えている可能性がある
さらに
✔ 若い方や治療負担の大きい方では影響が大きい
👉 医療だけでなく、社会全体での理解が重要です
🔍 なぜ「見えにくい問題」なのか
主に以下の要因が考えられます。
① 言えない(自己開示の難しさ)
・偏見や差別は表に出しにくい
・「気にしすぎと思われたくない」
・「関係を悪くしたくない」
👉 実際より少なく見える可能性
② 気づかれない(無意識の偏見)
・悪意のない言葉が多い
・「自己管理しっかりしないとね」
・「食べすぎでは?」
👉 外から問題として認識されにくい
③ 文化的背景
・我慢や自己責任を重視する傾向
・感情を表に出しにくい
👉 自分の中で抱え込みやすい
📝 ミニチェック
□ 周囲に病気のことを伝えにくい
□ 職場で気を使うことがある
□ 自分のせいだと感じてしまう
👉 1つでも当てはまる場合、スティグマの影響がある可能性があります
✏️ 糖尿病に関する代表的な誤解
・「自己管理ができていないからなる」
・「食べすぎが原因」
・「努力すれば治る」
・「インスリン=重症」
・「糖尿病=不健康」
👉 これらは医学的には正確ではありません
■ 当クリニックの取り組み
当クリニックでは、
・糖尿病とともに生きる皆さまが安心して医療を受けられる環境づくり
・正しい知識の普及による偏見の軽減
・医療と社会をつなぐ情報発信
に取り組んでいます。
■ 院長コメント
糖尿病は決して「個人の責任だけ」で起こる病気ではありません。
正しい理解が広がることで、糖尿病とともに生きる方が安心して生活できる社会を目指しています。
■ 今後に向けて
本研究は単施設・小規模研究ではありますが、
・日本におけるスティグマの実態
・医療者の役割
を示す重要な第一歩です。
今後はより大規模な研究を通じて、医療・社会環境のさらなる改善を目指していきます。
■ まとめ
👉 糖尿病の偏見は「見えにくい問題」
👉 若い方・治療負担が大きい方で影響が大きい
👉 社会全体での理解が必要
「不安」や「気になること」があれば、いつでもご相談ください。
(文責:すぎもと内科・糖尿病内科クリニック 杉本一博)