血糖値を最も下げる運動とは?~最新100研究が示した“本当に大切なこと” ~
「運動しなければ…」
そう思うほど、「続かない」「痩せない」「自信を失う」という悪循環に悩まれる方は少なくありません。
ですが、「続けられない背景」には、意志力だけでは説明できない
体質や環境の影響があることも分かってきています。
つまり、「頑張り方」だけでは説明できないのです。
■最新研究:どんな運動が最も効果的?
世界最大級解析
2025年、2型糖尿病の成人を対象とした大規模メタ解析が報告されました。
- 100研究
- 136介入
- 7,195人解析
最も効果的だったのは、「有酸素運動+筋トレ」が最適とされました。
| 順位 | 運動 | HbA1c低下 |
| 🥇 | 有酸素+筋トレ | −0.74% |
| 🥈 | HIIT | −0.71% |
| 🥉 | 有酸素運動 | −0.62% |
| 4 | 筋トレ | −0.36% |
さらに:
- 空腹時血糖
- 血圧
- 中性脂肪
- 体脂肪
- 腹囲
- 心肺機能
などにも改善効果が認められました。
■最新研究まとめ図


■「頑張っても痩せにくい人」は実際にいます
これは非常に重要です。
近年の肥満症研究では、
食事制限しても、運動しても、痩せにくい体質の方が実際に存在することが明確になってきています。
■遺伝子が関係している可能性
最近の研究では、アドレナリン(交感神経)の働きや脂肪細胞の反応性に関わる遺伝子の違いが、エネルギー消費や脂肪燃焼、運動への反応性に影響する可能性が報告されています。
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つまり、「同じ努力をしても結果が異なる」背景には、“体質の違い”が関係している可能性があるのです。
■実は昔は「有利な遺伝子」だった?
このような「痩せにくい体質」は、
原始時代のような、飢餓、食料不足、長時間の狩猟環境では、
“生き残りやすい体質”でした。
少ないエネルギーでも、
- 長く動ける
- 痩せにくい
- 飢餓に耐えられる
ためです。
しかし現代では、飽食、超加工食品、座位時間増加、運動不足により、
逆に肥満を助長しやすくなっています。
つまり、かつては生存に有利だった体質が、
現代の飽食環境では肥満リスクにつながりやすくなっている可能性があります。
■「最強の運動」より大事なこと
最近の研究で最も重要なのは、
「最強の運動」ではなく、「最も続けられる運動」という考え方です。
■HIIT(高強度運動)は最強?
最近は、HIIT(High-Intensity Interval Training:高強度インターバルトレーニング) も注目されています。
HIITとは、
「かなりきつい運動」と「軽い運動・休憩」を交互に繰り返す運動です。
強度としては、一般的に最大運動能力の70〜95%程度が用いられます。
分かりやすく言うと、「息がかなり上がる運動」です。
例えば:
- 全力に近い速歩
- ダッシュ
- 強い自転車こぎ
を短時間行い、
その後:
- ゆっくり歩く
- 軽く休む
を繰り返します。
<典型例>
例えば:
① 速く歩く(1分) →② ゆっくり歩く(1〜2分) これを数回繰り返す。
<強度の目安>
中等度運動
- 会話できる
- 歌えない
程度。
<HIIT>
- 会話が難しい
- 息がかなり上がる
程度。
HIITは短時間で高い代謝改善効果を示す研究もあります。
しかし実際には:
- きつすぎる
- 続かない
- 関節が痛い
- 疲労感が強い
という問題もあります。
特に、肥満症、運動習慣が少ない方では、
無理な高強度運動は、関節痛や挫折につながる場合があるため、
運動習慣の少ない方では、慎重に導入することが大切です
■高齢者では「バランス運動」も重要
一方で、高齢者では、
- 転倒
- 骨折
- フレイル(虚弱)
- サルコペニア(筋肉減少)
予防も非常に重要です。
特に糖尿病では、
- 神経障害
- 筋力低下
- バランス能力低下
が起こりやすく、転倒リスク上昇につながることがあります。
そのため最近は、「血糖値を下げる運動」だけでなく、「転ばない体をつくる運動」も
重視されています。
<自宅でもできるバランス運動>
例えば:
- 開眼片足立ち
- かかと上げ
- 椅子立ち上がり
- ゆっくりしたスクワット
などです。出来る方は、相撲の四股もお勧めです。
特に「開眼片足立ち」は、
- バランス能力
- 下肢筋力
- 転倒予防
に有効とされています。
◎開眼片足立ちの目安
壁や机につかまれる環境で、左右1分ずつから始めます。
難しい場合は:
- 数秒
- 指を軽くつく
だけでも十分です。
■大切なのは“安全に続けること”
運動は、「頑張りすぎること」より、「安全に、少しずつ続けること」が最も重要です。
年齢や体力に合わせて、“自分に合った運動”を見つけていきましょう。
■まずは“小さな成功体験”から
大事なのは、「完璧にやること」ではありません。
まずは:
- 週1回 だけ
- 5分 だけストレッチ
- 30〜60秒 だけ早歩き
- 階段を使う
- 食後に屈伸、腕立てする
など、“できること”、“できそうなこと”から始めることです。
最近は、「短時間運動を小分けする(Exercise snacks)」という考え方も注目されています。
<例>
- 食後1分だけ早歩き
- CM中スクワット
- 歯磨き中かかと上げ
そして、「できた!」という小さな成功体験を積み重ねることが、長期的な血糖改善につながります。
■失敗体験は意欲を奪ってしまう
一方で、無理な運動は、
- 挫折
- 自己否定
- 「自分には無理」
につながることがあります。
これはその後の、食習慣改善、運動習慣改善など生活習慣改善への意欲まで低下させてしまいます。
だからこそ、“無理なく続けられること”が最も重要なのです。
■それでも改善が難しい場合は
生活習慣改善を頑張っても、
- 高度肥満
- 肥満による健康障害
- 糖尿病悪化
が続く場合があります。
その場合、当クリニックでは必要に応じて:
- GLP-1受容体作動薬
- GIP/GLP-1受容体作動薬
なども含め、一人ひとりの体質や状態に合わせた治療をご提案しています。
■最後に
糖尿病や肥満症は、「意志の弱さ」だけでは説明できない病気です。
体質・遺伝子・環境は、一人ひとり異なります。
しかし、体は動かさなければ、確実に衰えていきます。
だからこそ大切なのは、他人と比べることではなく、“自分に合った続け方”を見つけることです。
5年後、10年後の皆さまの未来のために、
「できないこと」ではなく、「できること」を一緒に積み重ねていきたいと考えています。
(文責:すぎもと内科・糖尿病内科クリニック杉本一博)