(NEW)ゼップバウンドを睡眠時無呼吸症候群に保険で使用できる方について
ゼップバウンドは、肥満を伴うすべての睡眠時無呼吸症候群の方に保険で使用できるわけではありません。
保険で治療を受けるためには、主に次の条件を満たす必要があります。
1.中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群があること
睡眠検査で、次のいずれかを満たす必要があります。
- 精密な睡眠検査(PSG)で、無呼吸低呼吸指数(AHI)が1時間あたり15回以上
- 簡易睡眠検査で、呼吸イベント数(REI)が1時間あたり30回以上
AHI・REIは、睡眠中に無呼吸や呼吸が浅くなる状態が、1時間あたり何回起きているかを示す数値です。
簡易検査で用いられるREIは、機器を装着していた時間をもとに算出されるため、装着後に実際には眠っていなかった時間も含まれることがあります。一方、精密検査では脳波によって実際の睡眠時間を確認し、その時間をもとにAHIを算出します。このため、REIはAHIより低めに出ることがあります。
また、簡易検査では実際の睡眠時間や睡眠の深さを正確に把握できず、診断精度にも限界があります。そのため、ゼップバウンドの保険適用を簡易検査だけで判断する場合には、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群であることをより確実に確認する目的で、REI 30回/時以上という厳しい基準が設定されています。
簡易検査でREIが30回/時未満であっても、精密検査でAHIが15回/時以上と確認されれば、保険適用の対象となる可能性があります。
2.BMIが27以上であること
BMIは、身長と体重から計算する肥満度の指標です。
ただし、臨床試験でBMI 27以上30未満の方は少なかったため、原則としてBMI 30以上の方が主な対象とされています。
BMI 27以上30未満の場合は、治療の必要性と安全性をより慎重に判断します。
3.食事療法・運動療法を3か月以上行っても、十分な減量が得られないこと
原則として、ゼップバウンドを処方する医療機関で、患者さんごとの状態に合わせた食事療法・運動療法の計画を作成します。
その計画に基づく治療を3か月以上行っても、十分な体重減少が得られない場合に、ゼップバウンドの使用を検討します。
この期間中に、少なくとも1回、管理栄養士による栄養指導を受ける必要があります。
食事や運動の取り組みについて、記録をお願いすることがあります。
※肥満低換気症候群の一部や心不全があり、医師が早期治療を必要と判断した場合には、3か月を待たずに治療を検討できることがあります。
4.処方できる医療機関が限られています
ゼップバウンドを睡眠時無呼吸症候群に対して保険で処方できるのは、国が定めた施設要件を満たす医療機関に限られます。
専門医がいるだけでは十分ではなく、関係学会の教育研修施設であること、管理栄養士が常勤していること、睡眠検査や副作用への対応ができることなどが必要です。
そのため、条件に該当していても、すべての医療機関で処方を受けられるわけではありません。
治療開始後にも条件があります
治療開始後も、
- 食事療法・運動療法を継続する
- 2か月に1回以上、管理栄養士による栄養指導を受ける
- 毎月、体重や副作用を確認する
- 3~4か月使用しても減量傾向がなければ中止する
- 6~7か月を目安に精密な睡眠検査を行う
- 睡眠時無呼吸の改善傾向がなければ中止する
ことが求められます。
また、現在の制度では、投与期間は最大52週間です。
大切な注意点
ゼップバウンドを開始しても、CPAPを自己判断で中止してはいけません。
体重減少と睡眠時無呼吸の改善を睡眠検査で確認したうえで、CPAPの継続や設定変更について主治医が判断します。
「BMIが基準を満たす」「睡眠時無呼吸がある」というだけで、すぐに保険適用になるわけではありません。睡眠検査の結果、これまでの治療経過、持病、副作用のリスクなどを総合的に確認して、適応を判断します。
(文責:医療法人寿里会すぎもと内科・糖尿病内科クリニック杉本一博)