(NEW)「こまめ運動」1分でも血糖変動は改善できる!?~最新研究が示した結果を解説~
| 「運動は30分くらい続けないと意味がない」と思っていませんか? 2026年にDiabetologiaに掲載された研究では、2型糖尿病のある人が、わずか1分間の高強度の自重運動を1日4回行うだけでも、食後血糖や血糖変動が小さいながら改善する可能性が示されました。 |
■「こまめ運動」とは?
英語では「exercise snacks」と呼ばれ、短い運動を1日の中でこまめに行う方法です。今回のコラムでは、一般の方に分かりやすいよう「こまめ運動」と呼びます。研究で用いられたのは、1回わずか1分の高強度自重運動でした。[1]
ただし、1分だけ「軽い運動」をすればよいという意味ではありません。今回の研究では、1分間の「強め運動」を1日4回、2日間行っています。つまり1日合計4分です。
■どんな研究だったのでしょうか?
対象は、インスリン治療を受けておらず、普段の運動量が少ない2型糖尿病のある31人でした。平均年齢は約58歳、平均HbA1cは6.6%、BMIは約31 kg/m²でした。参加者全員が「こまめ運動を行う2日間」と「特別な運動をしない2日間」の両方を経験する無作為化クロスオーバー試験です。食事内容は両条件でそろえ、持続血糖測定器を使って48時間の血糖を詳しく評価しました。[1]
こまめ運動は1日4回。研究で基本となった運動は、踏み台昇降、短い往復走、その場走りなどでした。体力に応じて、横方向への往復運動、足を左右に大きく開いて行うスクワット、階段昇降、椅子からの立ち座りなどに変更されました。強度は「かなりきつい」と感じる程度(自覚的運動強度7/10以上)が目標でした。各運動は少なくとも1時間程度あけ、できれば朝・昼・夕の食事の30〜60分後に行うよう勧められました。[1]

1日4回、各1分の「こまめ運動」を行った研究の概要(Babir FJら[1]をもとに作成。人物の運動動作は模式的なイメージ)
■結果① 48時間の平均血糖は「有意差なし」
まず大切なのは、主な評価項目だった48時間の平均血糖です。こまめ運動を行った条件では平均血糖が約3.6 mg/dL低い方向でしたが、統計学的な有意差には届きませんでした(p=0.07)。[1]
つまり、この研究から「1日4分の運動で平均血糖が明らかに下がる」とまでは言えません。ここは結果を過大に解釈しないことが重要です。
■結果② 血糖の「揺れ幅」は小さくなった
一方で、血糖変動を表す複数の指標は改善しました。血糖値の標準偏差は約1.8 mg/dL低下し、変動係数は1%低下、血糖変動の大きさを示す指標も約5.4 mg/dL低下しました。また、血糖が70〜140 mg/dLの比較的狭い範囲に入っていた時間は3%増えました。いずれも変化量は大きくありませんが、統計学的には有意でした。[1]
「平均値そのものは大きく変わらなくても、上下の振れを少し抑えられた」というのが、この研究の興味深い点です。
■結果③ 朝食後と夕食後の血糖上昇も改善
朝食後と夕食後では、食後2時間の平均血糖、最高血糖に加え、食後2時間にどれだけ血糖が上がったかを表す指標(血糖曲線下面積)などが、こまめ運動を行った条件で有意に低くなりました。一方、昼食後は、血糖のばらつきを示す指標を除き、明らかな差は認めませんでした。[1]
昼食後だけ明確な改善がみられなかった理由は、この研究だけでは分かっていません。食後血糖の上がり方や運動を行ったタイミング、日中の活動量などが影響した可能性はありますが、現時点では推測の域を出ません。
実際に参加者が運動したタイミングは、平均すると朝食後約47分、昼食後約49分、夕食後約54分でした。食後に短時間でも大きな筋肉を動かすことが、食後の血糖上昇を抑える一因になった可能性があります。[1]
■なぜ、たった1分でも効果が出るのでしょうか?
運動すると、筋肉は血液中のブドウ糖をエネルギー源として取り込みます。筋肉の収縮によるブドウ糖の取り込みには、インスリンとは別の仕組みも関わるため、短時間でも大きな筋肉をしっかり動かすことで、食後の血糖処理を助ける可能性があります。[2]
以前から、長時間座り続ける時間を短い歩行や軽い筋力運動で中断すると、2型糖尿病のある人の食後血糖やインスリン反応が改善することが報告されています。[2]簡単な筋力運動とは、浅めのスクワット、かかと上げ、お尻の筋肉を締める運動、膝上げなどを組み合わせて3分間行う運動です。特別な器具は必要ありません。

座りっぱなしを30分ごとに3分間の歩行または簡単な筋力運動で中断すると、血糖だけでなく、インスリンやCペプチドの上昇も抑えられました。Cペプチドは、膵臓からインスリンが分泌されるときに一緒に放出される物質で、体がどの程度インスリンを分泌したかを知る目安になります。つまり、こまめに体を動かすことで、食後の血糖上昇だけでなく、それを処理するために必要なインスリン分泌の負担も軽減できる可能性があります。さらに、中性脂肪は簡単な筋力運動で有意に改善しました。[2]
■「1分」「3分」が最適とは限らない
ここで、「1分」や「3分」という数字だけに注目しすぎないことも大切です。2016年の研究では30分ごとに3分間の運動で食後代謝の改善がみられましたが、2021年の別の研究では、同じ簡単な筋力運動を30分ごとに3分行う方法より、60分ごとに6分行う方法の方が、7時間の食後血糖反応の改善に優れていました。30分ごとに3分の条件では、座りっぱなしと比べて血糖改善は認められませんでした。[3]
したがって、現時点では「1分、あるいは3分なら必ず最適」とまでは言えません。大切なのは、短時間運動の「正解」を一つの時間に決めることではなく、長時間座り続ける生活習慣を見直し、座りっぱなしの時間を身体活動で中断することです。
■では「30分の運動」はもう必要ない?
いいえ。今回の結果は、従来の運動療法が不要になったという意味ではありません。研究期間はわずか2日間で、対象も血糖コントロールが比較的良好で、インスリン治療を受けていない人でした。また、平均血糖の主要評価項目は有意差に至っていません。
2026年のADA/EASDコンセンサスでも、2型糖尿病のある人には、可能で安全な範囲で身体活動量を増やし、中〜高強度の有酸素運動を週150分以上(または高強度運動を週75分以上)、加えて筋力運動を週2〜3回行うことが推奨されています。同時に、立つ・歩く機会を増やすなど、「1日全体の身体活動」を見直すことも重視されています。[4]
■大切なのは「何分・何回」より、座りっぱなしを減らすこと
今回の2026年研究では1回1分を1日4回、2016年研究では30分ごとに3分、2021年研究では30分ごとに3分と60分ごとに6分が比較されるなど、さまざまな方法が検討されています。現時点で「何分・何回が唯一の正解」とは言えません。[1][2][3]
実際の生活では、決まった回数を毎日続けることが難しい方もいます。まずは食後や仕事の区切りなど、座りっぱなしになりやすい場面で一度立って動くことから始め、自分の生活の中で無理なく続けられる方法を探すことが現実的です。
「できないから何もしない」のではなく、歩く、立ち座りをする、階段を使うなど、短時間でも座位を中断する機会を増やすことが第一歩になります。
| ◎まず試すなら、こんな「こまめ運動」から ● 食後30〜60分を目安に、1分だけ速めのその場足踏み ● 椅子からの立ち座りを、無理のない範囲で1分間 ● 安全に行える方は、踏み台昇降や階段昇降を1分間 |
■誰でも「高強度1分」を行ってよいわけではありません
今回の運動は「かなりきつい」と感じる高強度でした。高齢の方や、心血管疾患、重い自律神経障害、進行した網膜症、足病変、関節疾患などがある方は、同じ運動を自己判断で行う必要はありません。歩行、椅子からの立ち座り、座ったままの足踏みなど、安全な軽度〜中等度の運動で座りっぱなしを減らす方法もあります。運動内容は体力や合併症に合わせて調整することが大切です。[4]
■まとめ
今回の研究は、運動不足のある2型糖尿病の人でも、1回1分、1日4回という非常に短い高強度運動によって、食後高血糖と血糖変動が小さいながら改善する可能性を示しました。[1]
「運動する時間がないから、今日はゼロ」という発想から、「短時間でも体を動かしてみよう」へ。こまめ運動で重要なのは、「1分」や「3分」という数字そのものではありません。長く座り続ける生活を中断し、短時間でも筋肉を動かす機会を日常に取り入れることです。まとまった運動の代わりではなく、運動習慣への入り口として、自分に続けやすい形で取り入れるのがよいでしょう。
■参考文献
[1] Babir FJ, Marcotte-Chénard A, Sandilands RE, et al. Exercise snacks performed in real-world settings reduce postprandial hyperglycaemia and glycaemic variability in individuals living with type 2 diabetes: a randomised crossover study. Diabetologia. 2026;69(8):2200-2211.
[2] Dempsey PC, Larsen RN, Sethi P, et al. Benefits for type 2 diabetes of interrupting prolonged sitting with brief bouts of light walking or simple resistance activities. Diabetes Care. 2016;39(6):964-972.
[3] Homer AR, Taylor FC, Dempsey PC, et al. Frequency of Interruptions to Sitting Time: Benefits for Postprandial Metabolism in Type 2 Diabetes. Diabetes Care. 2021;44(6):1254-1263. doi:10.2337/dc20-1410.
[4] Davies MJ, Aroda VR, Bajaj M, et al. Management of type 2 diabetes, 2026. A consensus report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD). Diabetologia. 2026. doi:10.1007/s00125-026-06855-7.
(文責:医療法人寿里会すぎもと内科・糖尿病内科クリニック杉本一博)