糖尿病治療中断がもたらすリスクとは
【糖尿病治療をやめてしまうと、どうなる?】
~「最近調子がいいから…」そんな中断がもたらす重大リスク~
糖尿病は、残念ながらいったん良くなっても“治る”病気ではありません。
血糖値が正常になっても、治療をやめてしまうと、知らないうちに再び悪化してしまうことがあります。
「最近調子がいいから薬をやめようかな…」
「忙しくて通院できない」
「副作用が心配」「お金がかかるし…」
──このような理由で、治療を自己判断で中断してしまう方も少なくありません。
しかし、治療の中断は、命に関わる合併症(失明・腎不全・心筋梗塞など)を引き起こす原因となることが、さまざまな研究で示されています。
🔬 治療中断によるリスク増加を示す研究
①【日本国内の調査】
594人の2型糖尿病患者を対象とした研究では、1年以上治療を中断した人では腎症の発症リスクが増加(オッズ比 1.97、95%信頼区間: 1.14–3.36、P = 0.02)していました。
(糖尿病58巻2号, 2015年)
②【イギリスの研究】
10万人超の糖尿病患者を5年以上追跡した英国の調査では、HbA1cが高いまま1年以上治療が強化されなかった場合、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが最大67%増加することが示されました。
(Cardiovascular Diabetology, 2015)
③【多数の研究をまとめたレビュー】
2021年に発表されたレビュー研究では、糖尿病薬や血圧・脂質の薬を自己中断した人では、脳卒中・心筋梗塞・足の切断・失明・腎不全などの重大な合併症が増加していました。
中断が多いほど、これらのリスクはさらに高まります。
(J Diabetes Complications, 2021)
■ 治療を続けていれば、合併症は「防げる」病気です。
糖尿病の合併症(失明・腎不全・足の切断・心筋梗塞など)は、適切な治療と生活管理を続けていれば高い確率で予防できます。
実際、欧米や日本のデータでも、長期的な血糖コントロールが合併症の発症率を50%以上減少させることが示されています。
■ 中断してしまった方へ
再開は「今から」でも遅くありません。
「もう悪くなっているかもしれないから今さら…」と思わず、まずはご相談ください。
血糖・血圧・脂質の管理を見直すことで、進行を止めたり改善したりすることも十分に可能です。
(文責:杉本一博)