意外と知られていない「睡眠時無呼吸症候群」の多さと命に関わるリスク
~いびきや眠気を放置していませんか?~
糖尿病が「国民病」と呼ばれることは広く知られていますが、実はそれに匹敵するほど多くの人がかかっている病気がもう一つあります。
それが 睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome) です。
特に多くを占める 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:Obstructive Sleep Apnea) は、気道が寝ている間に狭くなったり塞がったりすることで呼吸が止まり、心臓や脳に大きな負担をかける病気です。
日本でもすでに900万人以上が「中等症以上」のOSAと推定されています。
2019年の国際的な疫学研究(Lancet Respir Med. 2019;7(8):687-698)では、日本でOSA中等症以上の有病者数は約900万人、軽症者を含めると2,200万人に達すると報告されました。
これは糖尿病とほぼ同じ有病率です。
しかし、OSAは自覚症状が少なく、医療機関で検査・診断を受けていない人が非常に多いのが現状です。
【日本の睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関する統計】
| 項目 | 内容 |
| 推定罹病者数 | 約 900万人以上(成人の約1割) |
| 有病率 | 男性:3〜7%、女性:2〜5%程度(年齢とともに増加) |
| 治療中の人数 | 約 60〜70万人程度(持続陽圧呼吸(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)治療中) |
| 治療受療率 | 推定罹病者のわずか約6〜7% |
| 診断されていない割合 | 約 90%以上が未診断・未治療 |
すぎもと内科・糖尿病内科クリニック 杉本一博
【放置すれば命に関わるリスクも】
OSAは単に「いびきをかく」「眠い」という病気ではありません。
未治療の重症OSAでは、年間で100人中1人以上が心筋梗塞や脳卒中などの致死的な心血管イベントを起こすという研究結果もあります(Marin JM et al. Lancet. 2005;365(9464):1046-53)。
さらに、長期的な追跡調査では、OSAを持たない人や治療中の人に比べて、未治療のOSA重症者は2〜4倍の心血管死リスクがあることが報告されています。
【閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)における予後に関する長期コホート研究】
| 第1著者・文献 | 研究デザイン | 対象者数 | 平均年齢 | 平均追跡期間 | 結果 |
| Lavieら (Eur Respir J, 2005) | 前向き | 13,850名 | 48歳 | 4.5年 | RDI >30で全死亡HR 2.2(有意)。 |
| Yaggiら (N Engl J Med, 2005) | 前向き | 1022名 | 61歳 | 3.4年 | AHI >36で全死亡HR 3.3(有意)。 |
| Marinら (Lancet, 2005) | 前向き | 1651名 | 50歳 | 10年 | AHI >30で心血管死OR 2.87(有意)。 |
| Youngら (Sleep, 2008) | 前向き | 1522名 | 48歳 | 18年 | AHI >30で全死亡HR 3.8(有意)。 |
| Marshallら (J Clin Sleep Med, 2014) | 前向き | 400名 | 53歳 | 20年 | RDI >15で全死亡HR 4.2(有意)。 |
| Punjabiら (PLoS Med, 2009) | 前向き | 6441名 | 63歳 | 10年 | AHI >30で全死亡HR 2.09(40〜70歳男性)。 |
AI:無呼吸指数(Apnea Index)、RR:リスク比(Risk Ratio)、UPPP:口蓋垂口蓋咽頭形成術(Uvulopalatopharyngoplasty)、AHI:無呼吸低呼吸指数(Apnea-Hypopnea Index)、RDI:呼吸障害指数(Respiratory Disturbance Index)、OR:オッズ比(Odds Ratio)、HR:ハザード比(Hazard Ratio)、CVS:心血管系(Cardiovascular System)、OSA:閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea)
※Marin-Oto Mによる研究より改変(Multidiscip Respir Med. 2019:14:21)
~治療すればリスクは大きく下がります~
OSAによる心血管死リスクは年齢と共に高まり、重症者や心血管疾患の既往のある方でさらに高まります。
しかし、適切に診断・治療されれば、このリスクは大きく減らすことができます。とくに有効なのが CPAP(持続陽圧呼吸)療法 です。
たとえば、重症OSAでもCPAPを使用している人では心血管死亡リスクはOSAのない方とほぼ同じレベルまで下がるという報告があります。
【臨床指標および診断状況に関連する心血管死の完全調整オッズ比】
| 変数 | オッズ比(95%信頼区間) | P値 |
| 年齢(年) | 1.09(1.04–1.12) | 0.001 |
| 診断群 | ||
| ・いびき(AHI<5) | 1.03(0.31–1.84) | 0.88 |
| ・軽度~中等度OSA(AHI: 5–15) | 1.15(0.34–2.69) | 0.71 |
| ・重症かつ未治療OSA(AHI: 15–30) | 2.87(1.17–7.51) | 0.025 |
| ・CPAP治療中のOSA(AHI>15) | 1.05(0.39–2.21) | 0.74 |
| 既存の心血管疾患(CVS) | 2.54(1.31–4.99) | 0.005 |
CPAP:持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure)、CVS:心血管系(cardiovascular system)、OSA:閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea)、AHI:無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index)
※Marin JMらによる研究より改変(Lancet. 2005;365:1046–53)
【あなたは大丈夫? OSAスクリーニングを受けた方がいい方】
以下のような方は、ぜひ一度スクリーニング検査をご検討ください。
✅ 典型的な症状がある方
- 大きないびき、息が止まると言われたことがある
- 日中の強い眠気や集中力の低下
- 起床時の頭痛や口の渇き
- 夜間頻尿、熟眠感がない
✅ 生活習慣病や持病のある方
- 肥満(BMI ≥25)または首囲が太い(男性>40 cm、女性>35 cm)
- 高血圧(特に薬を3剤以上使っても改善しない)
- 2型糖尿病
- 心房細動、心不全、脳卒中の既往
- メタボリックシンドローム
✅ 社会的にリスクが高い方
- 自動車・重機などの運転業務従事者
- 夜勤や交代勤務による不規則な生活
- 居眠り運転や労災事故の既往
- うつ症状や物忘れが気になる中高年
◎睡眠の質が、あなたの将来を変えます
当クリニックでは、太田西ノ内病院睡眠センターと連携し、専門的なスクリーニング検査・CPAP療法の導入判断・フォローアップを行っています。
「いびきが気になる」「昼間眠くてつらい」「検査を受けてみたい」など、少しでも心当たりのある方はお気軽にご相談ください。
🛌 検査は自宅で簡単にできるものから始められます
まずはご自身のリスクを知ることが、健康への第一歩です。
📞 電話でのお問い合わせ:024-968-2311
🌐 ウェブサイトでの初診予約も受け付けています。