コラム
朗報:1型糖尿病 根治への新しい一歩〜造血幹細胞から作る「膵島細胞移植」〜
■ これまでの課題
1型糖尿病は、免疫の異常等により膵臓の「インスリンを作る細胞(β細胞)」が破壊される病気です。そのため、いったん発症すると生涯にわたりインスリン注射が必要となります。
近年、持続血糖測定や自動インスリンポンプなど治療は進歩しましたが、「低血糖の危険」と「血糖管理の負担」は完全には解消されていません。
膵島(すいとう)移植は、β細胞を補う方法として有望ですが、提供できるドナー膵臓が非常に少ないという問題がありました。
■ 新しい治療「Zimislecel(ジミスレセル)」
今回の研究では、ヒトの多能性幹細胞(※)から作った膵島細胞を使った治療が行われました。
(※多能性幹細胞…体のあらゆる細胞に変化できる細胞)
この治療では、人工的に作られたβ細胞を含む膵島を門脈(肝臓へ向かう血管)に注入し、1型糖尿病を持つ方の体内でインスリンを分泌できるようにします。
治療後は、拒絶反応を防ぐため免疫抑制剤を使用します。
■ 試験の結果(1〜2年の観察)
対象は、重い低血糖を繰り返し、自分で低血糖を感じにくい1型糖尿病の方14人。
- 全員でインスリンを作る力(Cペプチド)が回復
- 重い低血糖はゼロに
- 平均HbA1cは7.8% → 6.0%台へ改善
- 83%(12人中10人)が1年後にインスリン不要に
- 血糖の「目標範囲内の時間(TIR)」は平均49% → 93%へ大幅改善
■ 安全性と注意点
- 主な副作用は下痢・頭痛・発疹などで、多くは軽度〜中等度
- 感染症や免疫抑制剤による影響に注意が必要
- 2名で重い合併症による死亡が報告(免疫抑制や持病の影響)
■ この研究の意義
今回の成果は、限られたドナー膵臓に頼らず、幹細胞から安定的にβ細胞を作れることを示しました。
今後、大規模で長期の試験が必要ですが、1型糖尿病の根治に向けた大きな一歩です。
■ まとめ
- 幹細胞由来の膵島移植が、1型糖尿病のインスリン離脱を可能に
- 血糖管理の精度が大幅に向上
- まだ免疫抑制剤が必要で、副作用対策が課題
- 将来的には「免疫抑制不要」の技術開発が進めば、実用化の可能性がさらに高まる
出典:
N Engl J Med. 2025 PMID: 40544428