(更新)新しい高血圧管理・治療ガイドライン2025と「血圧朝活キャンペーン」〜より安全で効果的な血圧管理を目指して〜
2025年8月に6年ぶりの高血圧管理・治療ガイドライン改訂が行われました。
今回の改訂では、最新の研究結果や日本の実情をふまえて、「いつ」「どのように」血圧を管理すべきかが見直されています。
ここでは、主な変更点をわかりやすくご紹介します。
① 「高血圧」の基準はどうなった?
従来どおり、診察室血圧で 140/90mmHg以上 が高血圧とされますが、家庭で測る 家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧とされています。
今回のガイドラインでは「家庭血圧の重要性」がさらに強調され、家庭での測定習慣が治療の第一歩とされています。
☑ ポイント:日本高血圧学会は2025年から「血圧朝活キャンペーン」を実施して、早朝高血圧の予防と改善を目的とした啓発活動を行っています。起床時と眠前の血圧を測って記録するだけで、治療効果や生活習慣の見直しにも役立ちます。
🕒 脳卒中の発症が多い時間帯
■ 最も多いのは「早朝〜午前中(6時〜12時ごろ)」
- 脳卒中の発症は、血圧が高くなる起床後数時間以内(特に6〜10時)に最も多いことが国内外の多くの研究で示されています。
- この時間帯は、以下のような身体の生理的変化が関係しています:
| 起床時の変化 | 影響 |
| 血圧の急上昇(モーニングサージ) | 脳血管への負担が増す |
| 交感神経の活性化 | 心拍数や血圧が上昇し血栓ができやすくなる |
| 血液の粘稠度上昇 | 血栓ができやすくなる |
| 脱水状態(睡眠中の発汗など) | 血液が濃くなる |
🌙 就寝中の発症も一定数ある
- 就寝中や明け方に**無症候性の脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)**が起き、朝に症状に気づくケースもあります(いわゆる「wake-up stroke」)。

※表示されている曲線は、リズム解析によって求められた最良の近似曲線
🔄 タイプ別の傾向
| 脳卒中のタイプ | 発症しやすい時間帯 |
| 脳梗塞(特にアテローム血栓性・心原性) | 朝方(6〜10時) |
| 脳出血 | 朝〜昼に多いが、夕方にも一定数 |
| くも膜下出血 | 比較的一日中満遍なく見られるが、朝がやや多い |
🧠 予防のヒント
- 起床直後の急な運動を避ける
- 起床時の血圧管理を重視する(モーニングサージ対策)
- 水分摂取を就寝前・起床後に行う(脱水予防)
- 降圧薬のタイミングを医師と相談(時間帯に配慮)
🧠【年齢によって異なる?】血圧と心臓・血管の病気による死亡リスクの関係
高血圧は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管病の大きなリスクとして知られていますが、年齢によってその影響の大きさが異なることをご存じでしょうか?
最近、日本の大規模な研究(Hypertension Research 2025)で、年齢別に血圧と心血管疾患による死亡リスクの関係が調査されました。以下では、その研究結果をわかりやすくご紹介します。

*人口寄与危険割合(PAF):特定の危険因子(喫煙、高血圧など)が原因で発生していると考えられる疾患や死亡の割合(%)を、その集団全体の中で見積もったもの
例(高血圧と脳卒中):
「脳卒中のPAFが30%」と報告された場合
→ 高血圧がなければ、脳卒中の30%は予防できたかもしれないということになります。
🔍 40〜64歳の方では「高血圧」が明らかなリスクに!
上図の左側は40〜64歳の方を対象とした結果です。
血圧が高くなるほど、脳卒中や心血管の病気で亡くなるリスク(ハザード比)が段階的に高まることがわかりました。
特に「I度高血圧(140〜<160/90〜<100 mmHg)」以上ではリスクが顕著に上昇しており、140/90 mmHgを超えるかどうかが大きな分かれ目になります。
「人口寄与危険割合(PAF)」という指標では、高血圧が原因と考えられる死亡が最大19.6%にも及ぶことが示されました。
➡ 40代〜60代の方にとっては、早めの血圧管理が将来の病気予防に非常に重要です。
🧓 65〜89歳では意外とリスクが平坦に?
上図の右側は65〜89歳の高齢者の結果です。
高齢者の方が血圧上昇によるリスクが高そうな印象ですが、意外なことに実際は高血圧による死亡リスクはあまり上昇しておらず、若年者よりフラットな傾向が見られます。
II度以上(160/100 mmHg以上)の高血圧でも、死亡リスクの上昇は〜中等度にとどまっています。
これは、高齢者では他の要因(がん、肺炎など感染症、腎機能低下、加齢そのもの)が影響しており、血圧単独では死亡リスクが判断しづらいことを示唆しています。
➡ 高齢者の血圧管理では「厳しすぎず、ゆるすぎず」が大切。全身の状態を見て個別に対応し、無理なく最も脳心血管疾患リスクの低い130/80mmHg未満を目指しましょう。
② 降圧目標を年齢によらず130/80mmHg未満(診察室血圧)、125/75mmHg未満(家庭血圧)
これまでのガイドラインでは年齢や持病の有無によって、目指すべき血圧の数値が細かく設定されていました。
| 対象 | 目標血圧(診察室) |
| 75歳未満 | 130/80mmHg未満 |
| 75歳以上 | 140/90mmHg未満(ただし体調に応じて調整) |
| 糖尿病・腎臓病(蛋白尿陽性) | 130/80mmHg未満を目指す |
高齢者でも**“安全に下げられるなら”130/80mmHg未満を目指す**という柔軟な姿勢が取られていました。
↓
今年のガイドラインから、降圧目標を年齢によらず130/80mmHg未満(診察室血圧)、125/75mmHg未満(家庭血圧)としています。ただし、やみくもに下げるのではなく、特に高齢者は個別状況を考慮し、有害事象や副作用に注意しながら降圧することとしています。

③ 生活習慣の見直しが「治療の柱」に
減塩が最も重要ですが、その他野菜摂取・肥満予防・十分な睡眠・運動・禁煙・節酒などの生活習慣改善が、薬よりも先に取り組むべき大切な治療とされています。血圧が130/80を超えたらまずは生活習慣の見直しを行いましょう。
特に、1日6g未満の減塩が明記され、「減塩は薬と同じくらい効く」とされています。
☑ 減塩のポイント:カロリーも多くなりがちな外食や加工食品を控え、だしやお酢、香辛料(スパイス、ハーブ)をうまく活用して塩分を減らしましょう。