【NEW】(更新)『運動と作業はどう違う?〜健康づくりの視点から〜』
私たちの毎日には、体を動かす場面がたくさんあります。
たとえば、畑仕事や家事、荷物運びなどの“作業”も体を使うため、「これだけ動いていれば十分、運動になっている」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、「運動」と「作業」には、健康への影響という点で大きな違いがあることをご存じでしょうか?
下の表にもあるように、それぞれの特徴を比べてみると、違いは明らかです。
| 作業 | 運動 | |
| 目的 | 仕事や日常の用事をこなすこと | 健康維持・増進のため |
| 動かす筋肉 | 限られた部位(例:腰・腕) | 全身をバランスよく使用 |
| 呼吸・心拍 | あまり上がらないことが多い | ゆるやかに上がる |
| リスク | 腰痛・関節痛 | 適切に行えば安全 |
| 効果 | 疲れるだけで健康効果は限定的 | 心肺機能・筋力・血流改善など多様な効果 |
🔹 運動は、全身をバランスよく鍛える活動です
ウォーキング、体操、水泳などの運動では、呼吸や心拍数がほどよく上がり、全身の筋肉や関節をバランスよく動かすことができます。その結果、血流が促され、生活習慣病の予防、筋力や柔軟性の維持、そして転倒予防にもつながります。
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🔸 一方、作業は特定の筋肉に偏った動きが多くなりがちです
農作業や介護、清掃、長時間の立ち仕事などは、同じ姿勢で作業を続けたり、限られた筋肉だけを使い続けたりすることが多いため、腰痛や肩こり、膝の痛みなどを引き起こす原因になることがあります。また、作業中は心拍数がそれほど上がらないため、有酸素運動としての効果も限られています。
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🟢 健康づくりのためには、「運動」としての時間を意識的に取り入れることが大切です
運動は、しっかり休養をとりながら継続することが理想的です。「疲れるから運動はムリ」と感じる方も、一日おきに30分程度のウォーキングやストレッチをするだけでも、5年後・10年後に大きな違いが生まれます。
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作業=運動ではありません。
身体の健康を守るためには、作業に加えて“運動”を意識的に取り入れることが、元気な毎日への第一歩です。
🏃♀️最近の研究より(海外デンマーク)―
💡 どんな研究?
デンマークで行われた大規模な研究(対象:104,000人、平均追跡10年)では、
人々を「仕事でどのくらい体を動かすか」と「余暇にどのくらい運動するか」で分けて、
心臓病や脳卒中などの大きな病気(心血管イベント)や死亡率との関係を調べました。
📊 結果は驚くべきものでした
- 余暇でよく体を動かす人ほど、
心臓病や脳卒中などのリスクが約15%低下し、
死亡率も約40%低下していました。
→ つまり、ウォーキング・ジョギング・サイクリングなどの「趣味や運動」は寿命を延ばす方向に働きます。 - 一方で、仕事でよく体を使う人(肉体労働など)では、
心血管病のリスクが約35%上昇し、
死亡率も約27%上昇していました。
→ 「体を酷使する仕事」が、かえって体に負担をかけていたのです。
下図参照

🧠 なぜ“逆の結果”になるの?
余暇の運動は、心拍数を上げたり筋肉を動かしたりすることで
心臓や血管を鍛え、体の回復時間も確保できます。
一方、仕事での身体活動は、
長時間立ちっぱなし・重い荷物を持つ・中腰姿勢など、
同じ動作の繰り返しや休みの少なさによるストレスや疲労の蓄積が特徴です。
これが血圧の上昇や慢性的な炎症につながり、逆に健康を損ねると考えられています。
❤️ メッセージ
仕事で体を使う方も、休日や仕事の合間に“リラックスできる運動”を取り入れることが大切です。
軽いウォーキングやストレッチ、深呼吸をしながらの体ほぐしなど、
心拍を上げて、しっかり休む時間を作ることが、健康寿命を延ばす鍵になります。
📚 出典
Holtermann A et al. The physical activity paradox in cardiovascular disease and all-cause mortality: the Copenhagen General Population Study.
European Heart Journal. 2021; 42:1499–1511.