【NEW】「食べ方の常識」が大きく変わる!?~2025~2030年版米国食事ガイドラインの注目ポイント~
アメリカの食生活の“教科書”とも言える「米国食事ガイドライン」は、
5年ごとに見直され、学校給食や病院食、国の栄養政策の基準にもなっています。
このコラムでは、これまでの常識を揺さぶる内容として注目を集めている最新版(2025~2030年版)について解説します。
- 出典:Scientific Report of the 2025 Dietary Guidelines Advisory Committee:2025–2030版ガイドラインの基礎となる科学的報告書。その全文PDFや章別のダウンロードが可能です(公開済み)。https://www.dietaryguidelines.gov/?utm_source=chatgpt.com
1️⃣「低脂肪・肉控えめ」からの転換?
今回、話題になったのは肉類や全脂肪乳製品、たんぱく質の重要性を前面に出した点です。
新しいガイドラインでは、従来の「脂肪は控えるべき」「肉はほどほどに」という単純なメッセージから一歩踏み込み、
- たんぱく質は不可欠
- 未加工の自然食品(real food)を重視
- 超加工食品や精製炭水化物を問題視
という姿勢が強調されました。
一方で、飽和脂肪酸を総エネルギーの10%未満に抑えるという数値目標自体は維持されています。
これは、科学報告書でも「この上限を超える明確な安全性の根拠は依然として乏しい」とされているためです。
また、超加工食品を制限することの重要性も繰り返し強調されています。
超加工食品とは?
👉 工場で高度に加工され、家庭では使わない成分(添加物・精製原料)を多く含む食品
👉 世界的に、肥満・糖尿病・心血管疾患・がん・死亡リスクとの関連が報告されています。
【超加工食品の具体例(分類別一覧表)】
| 区分 | 主な食品例 |
| ① 主食・炭水化物系 | 菓子パン(あんパン、クリームパン、デニッシュ) 食パン(砂糖・油脂・乳化剤入り) 即席ラーメン(袋麺・カップ麺) インスタント焼きそば 冷凍パスタ・冷凍うどん(味付け済み) 市販のピザ シリアル(砂糖・香料入り) コーンフレーク(加糖タイプ) |
| ② 肉・たんぱく質加工品 | ハム ベーコン ソーセージ・ウインナー サラミ スパム・ランチョンミートナゲット(チキンナゲット等) 成形肉(ハンバーグ、ミートボール) コンビニの加工肉惣菜 |
| ③ 菓子・スイーツ | スナック菓子(ポテトチップス、コーンスナック) クッキー・ビスケット チョコレート 菓子ケーキ・ロールケーキ ドーナツ アイスクリーム グミ・キャンディ |
| ④ 飲料 | 清涼飲料水(炭酸飲料) スポーツドリンク フルーツ飲料(果汁10~30%など) 加糖コーヒー・加糖紅茶 エナジードリンク 乳酸菌飲料(加糖タイプ) |
| ⑤ 調味料・即席食品 | カレールウ・シチュールウ 市販ドレッシング(特にクリーミー系) マヨネーズ(市販品の多く) めんつゆ・焼肉のたれ レトルト食品 インスタントスープ・味噌汁 |
| ⑥ 冷凍・総菜・コンビニ食品 | 冷凍唐揚げ 冷凍コロッケ コンビニ弁当 コンビニ惣菜 カップ惣菜(ポテトサラダ等) |
【超加工食品を見分ける簡単チェック】
✔ 原材料(添加物)表示が長い
✔ 見慣れないカタカナ成分が多い
✔ 砂糖・異性化糖・植物油脂が上位
✔ 調理せずすぐ食べられる
✔ 長期保存できる
👉 2つ以上当てはまれば要注意
【対比:超加工ではない食品(推奨)】
- 野菜・果物
- 魚
- 卵
- 豆腐・納豆
- 玄米・雑穀
- 無糖ヨーグルト
- 家庭調理の和食
【加工肉とは?】
👉 保存性や風味を高めるために、塩漬け・燻製・発酵・化学的加工を施した肉類です。
多くの研究で、心血管疾患・糖尿病・大腸がんリスク増加と関連しています。
🔴 代表的な食品例
【日本でよく食べられるもの】
- ハム
- ベーコン
- ソーセージ
- ウインナー
- フランクフルト
- サラミ
- チャーシュー(加工工程を経たもの)
- 焼豚
- コンビニ・スーパーの加工肉惣菜
【海外由来・加工度が高いもの】
- ホットドッグ
- ペパロニ
- スパム(ランチョンミート)
- 缶詰の肉製品
- 冷凍加工肉(成形肉)
🟢 対比:加工していない肉(相対的に望ましい)
- 生の鶏肉
- 生の豚肉・牛肉(加工していないもの)
- 魚・魚介類
- 大豆製品(豆腐・納豆・大豆)
精製炭水化物とは?
👉 穀物などから「食物繊維・ビタミン・ミネラル」を取り除き、でんぷんや糖質が主体になった炭水化物のことです。
もう少し噛み砕くと、本来、穀物の外側(ぬか・胚芽)には
- 食物繊維
- ビタミンB群
- ミネラル
が含まれています。
精製とは、これら大切な成分を削り落として「白く・やわらかく・食べやすく」加工することです。
【精製炭水化物の特徴】
- 消化吸収が非常に速い
- 血糖値が急上昇しやすい
- 満腹感が得られにくい(やめられない!とまらない!)
- 食べ過ぎ、肥満につながりやすい
👉 糖尿病・肥満・動脈硬化リスクと関連するとされています。
【代表的な精製炭水化物の例】
主食
(→別コラム:「ジャガイモ🥔」は健康に良い?白米と比較した最新研究が示す驚きの事実!!も参照下さい。)
- 白米
- 白い食パン
- うどん
- そうめん
- ラーメン
- 精製小麦のパスタ
菓子・加工食品
- 菓子パン
- ケーキ・クッキー
- ドーナツ
- シリアル(加糖タイプ)
砂糖類
- 白砂糖
- 異性化糖(果糖ブドウ糖液糖など)
【対比:精製されていない炭水化物(推奨されやすい)】
- 玄米
- 雑穀米
- 全粒粉パン
- オートミール
- 十割そば
- 豆類・いも類(食物繊維が多い)
実生活での「現実的な置き換え」
❌ 毎食白米 → ⭕ 1日1回は玄米・雑穀・豆類・いも類
❌ 菓子パン朝食 → ⭕ 全粒パン(工場油:トランス脂肪酸の多く含むショートニング/ファットスプレッド無添加のもの)+卵・ヨーグルト
❌ ハム・ベーコン常用 → ⭕ 焼き魚・鶏肉・豆腐
❌ 麺類単品 → ⭕ 野菜・たんぱく質を必ず追加
👉トランス脂肪酸(TFA)とは、
植物油などを工場で加工(部分水素添加)する過程で生じる脂肪酸です。
- LDL(悪玉)コレステロールを上げ、HDL(善玉)を下げる
- 心筋梗塞・脳卒中リスクを高める
- 主に マーガリン、ショートニング、揚げ菓子、加工食品 に含まれる
(※自然由来の微量TFAとは区別)
以下の様に日本の規制は遅れています。
(→別コラム:「食品安全:日本のトランス脂肪酸、なにが問題?〜「規制はゆるめ」だからこそ、上手に選んで減らすコツ〜」も参照下さい。)
| 項目 | 米国 | 欧州 | 日本 |
| 部分水素添加油脂(PHO) | ❌ 原則禁止 | ❌ 原則禁止 | ⭕ 禁止されていない |
| 工業的トランス脂肪酸 | ❌ 事実上排除 | ❌ 2%未満規制 | ⭕ 自主規制のみ |
| TFA含有量の上限 | 実質ゼロ | 脂質中2%未満 | 法的上限なし |
| 「0 g表示」義務 | ⭕ 義務 | ⭕ 実質義務 | ❌ 義務なし |
| 規制の性格 | 法規制 | 法規制 | 業界の自主対応 |
2️⃣ 科学報告書が示した「本当の健康食パターン」
ガイドラインの土台となった科学報告書では、年齢やライフステージを超えて
一貫した結論が示されています。それは、
健康的な食事とは、特定の食品を神格化することではなく、
食事全体の“パターン”で決まるという考え方です。
健康に有利とされた食事パターンは、次の特徴を持っています(健康的な地中海食、ベジタリアン食パターン)。
- 野菜・果物・豆類・ナッツ・全粒穀物・魚介類が多い
- 植物油などの不飽和脂肪を中心に摂る
- 赤肉・加工肉、精製穀物、加糖食品・飲料、飽和脂肪は控えめ
つまり、未加工の自然食品を優先し、「肉か植物か」という二者択一ではなく、植物性食品を軸にしつつ、質のよい動物性食品も制限しすぎずに適量取り入れる食事が理想とされています。
🧂 なぜ米国の塩分制限は「ナトリム2.3g/日」と厳しいのか?
米国の食事ガイドラインでは、ナトリウム2.3g/日未満が推奨されています。
これは食塩に換算すると約5.8g/日で、日本の厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」目標(男性7.5g、女性6.5g)と比べるとかなり厳格です。
この背景には、次のような理由があります。
- 🇺🇸 高血圧・心血管疾患が非常に多い
- 🇺🇸 加工食品・外食由来の塩分が極端に多い
- 🇺🇸 食塩感受性が高い肥満症・糖尿病が多い
つまり、米国のナトリム2.3g(食塩相当量5.8g)という数値は、
“達成しやすい目標”ではなく、
これを超えると心血管リスクが明確に上昇することが示されている
「科学的な安全上限」として設定されています。
一方、日本では
- 伝統的に塩分摂取量が多い食文化への配慮
- 高齢者が多く、急激な減塩による食欲低下・低栄養への配慮
といった事情から、段階的・現実的な目標値が採用されています。
👉 結論として、
日米の数値の違いは「科学の差」ではなく「国民の背景の差」です。
どちらも目指しているのは同じ――
高血圧や心血管病を減らすことにあります。
| 区分 | 基準値 | 位置づけ・意味 | 背景・理由 |
| 🟥 上限 (超えてはいけない科学的ライン) | ナトリウム 2,3 g/日(食塩 約5.8 g)(「米国食事ガイドライン」目標値) | これを超えると血圧・脳卒中・心臓病リスクが明確に上昇 | ・米国ガイドラインが示す科学的に確認された「安全上限」・「達成しやすい目標」ではなく守るべき科学的境界線 |
| 🟨 目標(まず目指す現実的ライン) | 食塩 男性7.5 g/日女性6.5 g/日(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」)目標値) | 多くの人が現実的にまず目指す目標 | ・日本の生活習慣・味覚を考慮・高齢者が多い社会背景・急激な減塩による食欲低下・低栄養を避けるため |
| 🟩 理想(可能であれば目指したいライン) | ナトリウム 約1,500 mg/日(食塩 約3.8 g) | 研究上、血圧・心血管リスクがさらに低下 | ・味の満足度の低下・継続の難しさ・低栄養リスクを考慮し全員には一律に勧めない・高血圧・糖尿病・腎臓病がある方では個別に検討 |
- 下図は食事由来ナトリウム摂取量と心血管疾患リスクとの関係を示しています。
ナトリウム摂取量が増えるにつれて、心血管疾患リスクが段階的に上昇することが示され、「ナトリウム2.3g/日を超えない」という米国ガイドラインの上限設定を科学的に裏付ける代表的研究の一つです。

👉院長からの一言
塩分は「低ければ低いほど良い」ではなく、
「超えない方が良い上限」と食欲低下や低栄養リスク、食べる楽しみを考慮し
「無理なく続けられる目標」を区別して考えます。
3️⃣ 子ども・妊娠期にも共通するメッセージ
今回のガイドラインは、乳幼児から高齢者、妊娠期まで一貫した視点を重視している点も特徴です。
- 子どもでは
👉 野菜・果物・全粒穀物を増やし、加糖飲料・超加工食品を避ける - 妊娠期では
👉 妊娠糖尿病や過剰体重増加を防ぐため、食事の質が重要
とされ、「早い時期からの食習慣が一生の健康を左右する」ことが強調されています。
米国では、20歳以上の成人の73%が過体重または肥満であり、2~19歳の小児・思春期では36%が過体重または肥満です。また、12~19歳では38%が糖尿病予備軍とされています。
このように、過体重・肥満・糖尿病予備軍といった状態が若年期から高い頻度でみられることは、現在の子どもの健康に影響を及ぼすだけでなく、これらの慢性疾患が成人期まで持続するリスクを高める点で、特に深刻な問題です。
これは米国に限ったことではなく、東北でもっとも肥満症が多い福島県においても同様と考えられます。



上の表は 「食品単体」ではなく「食事パターンとしての摂取量」と健康アウトカムの関連を示している点が重要です。
また、赤肉・加工肉、精製穀物、添加糖、加糖飲料が一貫して“▼”で示されている点は、年齢層・ライフステージを超えて共通しています。
4️⃣「何を食べるか」だけでなく「どう食べるか」
科学報告書で新たに重視されたのが、食べ方の行動面です。
- 朝食をとるかどうか
- 間食のタイミング
- ポーション(量)の大きさ
- 親が子どもにどう食べさせるか
といった点も、肥満や生活習慣病のリスクに関係すると整理されています。
単なる栄養計算ではなく、現実の生活に即したアプローチへと進化しています。
5️⃣ 専門家の間では「歓迎」と「慎重論」が併存
医師会や小児科学会は、
「超加工食品・加糖食品を減らす」という方向性を評価する一方で、
心臓病学会などは、
「未加工であれば動物性たんぱく質(赤肉含む)や飽和脂肪(全脂肪乳製品を含む)を許容しすぎることへの懸念」
も表明しています。
つまり今回の改訂は、これまでより動物性たんぱく質や脂肪の過度な制限から方向転換していますが、摂取栄養学の“最終結論”ではなく、議論が次の段階に進んだサインとも言えます。
まとめ:私たちにとっての実践ポイント
新しい米国食事ガイドラインが伝えたい核心は、意外とシンプルです。
- ❌ 極端な制限や流行の食事法(糖質を抜けは大丈夫など)に振り回されない
- ⭕ 野菜・豆・魚・全粒穀物を土台に
- ⭕ 加工度の低い「本物(自然)の食品」を選ぶ
- ⭕ 量・頻度・生活リズムも大切にする
「何かを制限/多く食べる」のではなく、
良質なたんぱく質や脂肪も含む自然食品を“どう選び、どう続けるか”が健康を決める時代に入った――
それが、2025~2030年版ガイドラインからの最大のメッセージです。
(文責:すぎもと内科・糖尿病内科クリニック杉本一博)