高い悪玉コレステロールは下げれば良い?
悪玉コレステロール(*)の管理目標は人によって異なります
*当クリニックでは国際的に用いられているNon-HDLコレステロール(Non-HDL-C)を悪玉コレステロールの値として用いています。
Non-HDL-C は以下の計算式で求められます:
Non-HDL-C = 総コレステロール − HDLコレステロール(善玉コレステロール)
(LDL-Cも含めた動脈硬化を引き起こす全てのコレステロールを含み、LDL-Cより強く動脈硬化性疾患(CVD)と関連し信頼性が高い指標です)
▶ なぜ「すべての人に同じ目標値」が使えないの?
人それぞれ、心筋梗塞や脳梗塞など「動脈硬化性疾患(CVD)」を起こすリスクが異なります。
そのため、脂質管理のガイドラインでは「リスクの高さに応じて」Non-HDL-Cの目標値を設定しています。
心血管リスクに応じたNon-HDL-Cの管理目標
| リスク分類 | 代表例 | Non-HDL-C管理目標 |
| 🟥 極高リスク | ・心筋梗塞後・脳梗塞後・糖尿病+他のリスク因子 | 100 mg/dL未満 |
| 🟧 高リスク | ・糖尿病(単独)・慢性腎臓病(中等度以上)・複数のリスク因子(喫煙+高血圧など) | 130 mg/dL未満 |
| 🟨 中リスク | ・高血圧や喫煙など、1~2個のリスク因子 | 150 mg/dL未満 |
| 🟩 低リスク | ・明らかなリスク因子なし | 170 mg/dL未満 |
European Society of Cardiology (ESC) / European Atherosclerosis Society (EAS) Guidelines (2019)より作成
🔍 よくある質問
Q.「健康診断でコレステロールが高かったけど、大丈夫ですか?」
→ 大切なのは“あなたの心血管リスクに合った目標値かどうか”です。
Q.「隣の人と違う目標値を言われたけど?」
→ 年齢や持病によって動脈硬化のリスクが異なるため、一人ひとり違うのが正しいのです。
コレステロール低下薬の種類によってCVD予防効果には大きな差があります
以下の表のようにコレステロール低下薬によって心筋梗塞や脳梗塞などの一次予防(まだ心血管イベントを起こしていない人への予防)効果は異なります。
<一次予防における有効性が示されたコレステロール低下薬>
| 薬剤名 | 薬剤分類 | 一次予防における有効性のエビデンス | 主な特徴 |
| スタチン | HMG-CoA還元酵素阻害薬 | 多数のランダム化臨床試験(例:JUPITER試験、MEGA試験)で心血管イベント減少を確認 | LDL-C低下効果が高く、一次予防の第一選択薬 |
| エゼチミブ | 小腸コレステロール吸収阻害薬 | 一次予防単独での直接的有効性は乏しいが、スタチン併用でのLDL-C追加低下効果あり | スタチン不耐症や補助薬として使用 |
| PCSK9阻害薬(エボロクマブ、アリロクマブ) | モノクローナル抗体 | FOURIER試験、ODYSSEY OUTCOMESなどでは二次予防で有効性確認、高リスクの一次予防対象での使用も期待 | 強力なLDL-C低下。価格と投与方法が課題 |
| ベムペド酸 | ATPクエン酸リアーゼ阻害薬 | CLEAR Harmony試験などでLDL-C低下と安全性を示す。一次予防での研究は進行中 | 経口薬。スタチン不耐症への選択肢 |
<補足ポイント>
- 以上のように、現時点ではスタチンは一次予防の有効性が示された唯一のコレステロール低下薬になります。
- 日本では、MEGA試験(日本人対象)が一次予防におけるスタチンの効果を明確に示した代表的研究です。
- エゼチミブやPCSK9阻害薬は補助的役割として、高リスク例で一次予防に使われることがあります。
🏥 当クリニックでは…
皆さま一人ひとりの病状とリスクを見ながら、
最適な脂質の管理目標と治療薬を一緒に設定し、動脈硬化の予防に努めています。