未来の栄養学「精密栄養学」とは?~同じ食事なのに結果が違う「体質を活かす医療」へ~
🟦 まず結論(3秒で理解)
食事の効果は人それぞれ異なります。
その違い(=体質)を理解し、
自分に合った食事に調整する考え方が精密栄養学です。
■ なぜ今、栄養学が変わろうとしているのか
これまでの食事指導は
- カロリー制限
- 脂質制限
- 塩分制限
といった「共通ルール」が前提でした。
しかし実際には
- 痩せる人と痩せない人
- 血糖が改善する人としない人
が存在し、同じ食事でも結果は大きく異なります。
■ 🧠 その理由は「体質」にあります
この違いの正体は、体質(=身体の中の仕組みの違い)です。
<体質を決める主な要素>
🟩① 遺伝(生まれつきの違い)
- 牛乳でお腹がゴロゴロする
- 脂質で太りやすい
- 血糖が上がりやすい
これらは遺伝の影響です。
肥満の約40〜70%は遺伝が関与するとされています。
🟨② 腸内細菌(もう一つの臓器)
腸内には100兆個以上の細菌が存在し、食べたものの処理方法に関わっています。
その結果
- 血糖の上がり方
- 脂肪のつき方
- 炎症の起こりやすさ
に影響します。
🟧③ 生活習慣(変えられる体質)
- 睡眠
- 運動
- ストレス
これらも食事の効果を左右する重要な要素です。
■ 🔬 精密栄養学とは?
これらを踏まえた新しい考え方が、精密栄養学(Precision Nutrition)です。
✔ 一言でいうと、「平均」ではなく、個人の体質に合わせた食事医療
■ 未来の栄養医療の流れ~精密栄養学はどのように行われるのか~

🟦STEP 1:現在の状態を把握する
- 身体測定(体重・体組成)
- 血液検査
- 血糖測定
👉 健康状態と代謝の特徴を把握します
🟦STEP 2:日常生活を見える化する
- 食事内容
- 血糖変動
- 活動量・睡眠
👉 普段の生活での変化を把握します
🟦STEP 3:個人差を確認する
同じ食事でも
- 血糖
- 体重
- 体調
の反応が異なることを確認します
🟦STEP 4:食事を調整する(基本+応用)
科学的に推奨される食事
(全粒穀物・野菜・大豆・魚・ナッツなどの自然食品)
を基本としながら、個々の状態に応じて調整します
🟦STEP 5:効果を見ながら調整する
- 血糖
- 体重
- 体調
を確認しながら、継続できる形へ調整します
🟦STEP 6:継続と最適化
体の状態は変化するため、食事も定期的に見直していきます
🟩ポイント
食事は「一度決めて終わり」ではなく、その人に合わせて調整し続けるものです。
■ 当クリニックの考え方
当クリニックでは、2025年の米国科学報告書(別コラム「「食べ方の常識」が大きく変わる!?~2025~2030年版米国食事ガイドラインの注目ポイント~」)に基づき
- 全粒穀物
- 野菜
- 大豆
- 魚介
を中心とした食事を基本としています。
このレポートは、米国保健福祉省(HHS)と農務省(USDA)に提出されたエビデンスベースの専門家報告書です。
さらに
- 木の実
- 無脂肪・無糖乳製品
- アボカド
などの自然食品を取り入れた栄養指導を行っています。
そのうえで個々の嗜好や検査結果に応じた調整(基本+応用)を行い、
無理なく継続できる食事療法を大切にしています。
■ 🧬 食事の効果は「体質の組み合わせ」で決まる
食事の反応は
- 遺伝
- 腸内環境
- 生活習慣
- 環境
の組み合わせで決まります。
同じ食事でも結果が異なるのは自然なことです。
■ 🍞 同じ糖でも影響は異なる
食べ過ぎると
- ブドウ糖 → 皮下脂肪
- 果糖 → 内臓脂肪
👉糖質の種類によって体への影響が異なることが分かってきています

<図の解説>
ブドウ糖と果糖は、体への影響が異なります。
ブドウ糖は主に血糖を上げ、満腹感に関わるホルモン(インスリンやレプチン)を刺激します。
一方で果糖は、これらのホルモン反応が弱く、満腹感が得られにくい特徴があります。
その結果、果糖は食欲を抑えにくく、過剰摂取につながりやすいと考えられています。同じ「糖質」でも、体への作用は一様ではありません。
■ 🧠 体は変化する(重要)
体質は固定ではありません。
- 体重
- 運動
- 睡眠
によって、食事への反応も変化します。
精密栄養は、「調整し続ける医療」です。
■ 💡 精密栄養学のメリット
- 血糖改善につながりやすい
- 無理のない食事が見つかる
- 不必要な制限が減る
- 継続しやすい
■ 🧪 最先端技術と今後
- 遺伝解析
- 腸内細菌解析
- CGM
- AI解析
などにより、個別の食事反応の理解が進んでいます。
※ただし現在は発展途上であり今後の研究の蓄積が必要です。
🟦 今すぐできる第一歩
- 食後の体調を観察する
- 体重・血糖を記録する
- 流行ではなく「自分に合うか」を重視する
🟦まとめ
- 食事の効果は人それぞれ
- その理由は体質にある
- 精密栄養は体質を活かす医療
- 今後の標準医療になる可能性があります
🟦 最後に(クリニックから)
「頑張っているのに結果が出ない」
それは、あなたの問題ではなく、方法が合っていない可能性があります
当クリニックでは無理なく続けられる食事療法を一緒に考えていきます。
お気軽にご相談ください。
(文責:すぎもと内科・糖尿病内科クリニック 杉本一博)