(NEW)アイスクリームとジュース、糖尿病リスクが高いのはどちら?~同じ甘い食品でも結果が違った米国の長期研究~
「ジュースもアイスクリームも、どちらも甘いから糖尿病にはよくない」。
一般には、そのように考えられています。しかも、脂肪も多いアイスクリームのほうが、より糖尿病リスクを高めそうに思えるかもしれません。
ところが、超加工食品の摂取量と糖尿病発症リスクの関係について、米国の中年成人を約21年間追跡した研究では、甘い飲み物はリスク上昇と関連した一方、アイスクリームはリスク低下と関連するという、意外な結果が報告されました。 [1]
| ↑ 糖・人工甘味料入り飲料 糖尿病リスク 29%高い | ↓ アイスクリーム 糖尿病リスク 12%低い | ! 読み方の注意 直接比較・予防効果の証明ではありません |
| <このコラムの結論> 甘い飲み物は日常の水分補給として繰り返し摂取しやすく、糖尿病リスク上昇との関連が比較的一貫しています。一方、アイスクリームを健康のために積極的に食べる根拠はありません。 |
■ そもそも「超加工食品」とは?
「超加工食品」とは、単に加熱、冷凍、缶詰などの加工を施した食品をすべて指す言葉ではありません。
食品の加工度を4段階に分けるNOVA分類では、砂糖、油脂、でんぷん、たんぱく質などの食品由来成分を組み合わせ、香料、着色料、乳化剤、人工甘味料などを用いて工業的に製造された食品を、超加工食品に分類します。 [2]
代表的な食品には、次のようなものがあります。
● 清涼飲料水、果汁飲料、ダイエット飲料
● スナック菓子、チョコレート、キャンディー
● ハム、ソーセージなどの加工肉
● インスタント麺、冷凍ピザ、調理済み食品
● 菓子パン、ケーキ、クッキー
● アイスクリーム
これらは手軽で保存しやすい一方、製品によっては糖分、塩分、飽和・トランス脂肪酸などの脂質、エネルギーが多く、食物繊維が少ない傾向があります。ただし、清涼飲料水から加工肉、シリアル、アイスクリームまで性質の異なる食品を含むため、超加工食品であればすべて同じように健康へ影響するとは限りません。
| <ポイント> 「超加工食品かどうか」だけでなく、食品の種類、栄養組成、摂取量、食べ方まで分けて考える必要があります。 |
■ 1万3,172人を約21年間追跡した米国研究
この研究は、米国の地域住民を対象とするARIC研究に参加し、開始時点では糖尿病のなかった成人1万3,172人を解析した前向きコホート研究です。食事内容を質問票で調査し、超加工食品全体および食品群ごとの摂取量と、新たな糖尿病発症との関係を調べました。 [1]
追跡期間の中央値は21年間で、4,539人が糖尿病を発症しました。超加工食品全体では、摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べ、糖尿病発症リスクが13%高くなっていました。さらに、研究では、飲料、加工肉、菓子などについて食品ごとに「1回分」を定め、それらを合計して1日の超加工食品摂取量を算出しました。その合計が1日1回分多い人では、糖尿病発症リスクが平均約2%高い関連がみられました。ただし、どの種類の超加工食品でも、1回分増えるごとに一律に2%高くなるという意味ではありません。
| <「1回分」とは?> すべての食品で同じ重さを意味するのではなく、飲料、菓子、加工肉など、食品ごとに設定された一般的な摂取量を指します。 |
| 食品群 | 糖尿病発症リスク |
| 糖および人工甘味料入り飲料 | ↑ 29%高い |
| 超加工肉類 | ↑ 21%高い |
| 砂糖を含むスナック菓子 | ↑ 16%高い |
| 焼き菓子 | ↓ 12%低い |
| アイスクリーム | ↓ 12%低い |
アイスクリームでは、摂取量が最も多い群のハザード比は0.88(95%信頼区間0.79~0.97)、焼き菓子でも0.88(0.77~0.99)でした。 [1]

図1 米国ARIC研究:各超加工食品群の摂取量が最も多い群と最も少ない群を比較した糖尿病発症リスク [1]
■ この研究の「ジュース」は、果汁だけではない
タイトルでは分かりやすく「ジュース」としていますが、研究で評価されたのは果汁だけではありません。
「糖および人工甘味料入り飲料」には、オレンジ・グレープフルーツジュースやフルーツパンチに加え、通常のコーラなどの清涼飲料、低カロリー・ダイエット飲料などがまとめて含まれていました。 [1]
| <この研究からは言えないこと > 「100%果汁ジュースそのものが、アイスクリームより29%危険」とは結論づけられません。また、ジュースとアイスクリームを直接比較した解析ではなく、それぞれの食品群について、摂取量が多い群と少ない群を比較した結果です。 [1] |
■ なぜ甘い飲み物はリスクが高かったのか
甘い飲み物は、ほとんど噛まずに短時間で飲めるため、糖分やエネルギーを容易に摂取できます。
エネルギー量と栄養組成をそろえた液体と固形食品を比較した実験では、エネルギーを含む液体のほうが、その後の食事でのエネルギー補償が弱く、1日の総エネルギー摂取量が増えやすいことが報告されています。 [3]
| ◎飲料の問題は「糖分」だけではない のどの渇きを満たす飲み物として短時間に摂取でき、満腹感を十分に得る前に繰り返し飲めてしまうことも、長期的なリスクに関係する可能性があります。 |
ただし、この食品群には低カロリー・ダイエット飲料も含まれるため、観察された関連を糖分や液体エネルギーだけで説明することはできません。また、米国研究では飲む速さ、満腹感、食後血糖、インスリン分泌を直接測定していません。したがって、液体という形状が結果を説明したというのは、考えられる機序の一つにとどまります。 [1]
■では、アイスクリームは糖尿病を予防するのか
この結果を見て、「アイスクリームは糖尿病予防に役立つ」と考えるのは早計です。
論文の著者らが重視している説明の一つが、逆因果関係です。血糖値が高めであったり、肥満や糖尿病の家族歴があったりする人は、医療者からの助言や本人の判断によって、アイスクリームや焼き菓子を控えていた可能性があります。 [1]
| <逆因果関係とは> アイスクリームを食べたため糖尿病が減ったのではなく、もともと糖尿病になりやすい人ほどアイスクリームを控えていたため、摂取量が少ない群の発症リスクが高く見えた可能性です。 [1] |
■ 乳脂肪や「食品としての構造」が影響した可能性
アイスクリームには、糖質だけでなく乳脂肪や乳たんぱく質が含まれています。そのため、糖分を含む飲料とは消化・吸収や摂取のされ方が異なる可能性があります。ただし、それが糖尿病リスク低下の理由であることは証明されていません。
米国の3つの大規模コホート研究でも、アイスクリームと糖尿病リスクとの逆相関が報告されました。研究者らは候補として、乳脂肪に含まれる奇数鎖脂肪酸や乳脂肪球膜などを挙げていますが、機序は証明されておらず、逆因果や残余交絡も除外できません。 [4]

■ 「口の中にとどまる時間」も関係する?
飲料はすぐに飲み込めますが、アイスクリームはスプーンで少しずつ口に運び、冷たさ、香り、甘味、舌触りを感じながら食べます。必ずしも強く噛む食品ではありませんが、一般には飲料より口腔内にとどまる時間が長いと考えられます。
食べ物を見たり、においを嗅いだり、味わったりすると、血糖値が上がる前から一過性にインスリンが分泌されることがあり、これを頭相性インスリン分泌反応(CPIR)と呼びます。 [5]
口腔感覚への曝露時間や食べる速さを変えると、満腹感やインスリン反応が変化する可能性を示した実験もあります。したがって、アイスクリームでは甘い飲料より感覚刺激が長く続き、食事に備えた反応を起こしやすいのではないか、という仮説は生理学的には興味深いものです。 [6]
| ◎ただし、仮説の段階です CPIRには個人差が大きく、この反応が長期的な糖尿病発症リスクを下げるかどうかは分かっていません。今回の米国研究でも、口腔内滞留時間やCPIRは測定されていません。 [5][6] |
■ トランス脂肪酸が少ないから?
スナック菓子などに使用される脂肪の種類が、結果に影響した可能性も考えられます。しかし、米国研究では個々の製品に含まれる乳脂肪、植物油、工業的トランス脂肪酸などの量を測定していません。
また、マーガリンやショートニングという名称だけで、トランス脂肪酸の多寡を判断することはできません。部分水素添加以外の技術によって、トランス脂肪酸を低減した製品もあります。 [8]
さらに、製品によって脂肪組成が異なる焼き菓子も、糖尿病リスクの低下と関連していました。著者らは、焼き菓子の中に全粒穀物や食物繊維を含む比較的健康的な製品が混在していた可能性も指摘しています。 [1]
| <現時点での評価> 「アイスクリームにはトランス脂肪酸が少ないため、糖尿病リスクが下がった」と説明するには、根拠が不十分です。 |
■韓国研究では、アイスクリームがリスク上昇
韓国の成人7,438人を対象とした別の前向き研究では、アイスクリームの摂取重量が食事全体に占める割合が1パーセントポイント高くなるごとに、2型糖尿病発症リスクが8%高いという、米国とは反対方向の関連が認められました(HR 1.08、95%信頼区間1.03~1.13)。加工肉類でリスク上昇との関連がみられた点は、米国研究と共通していました。 [7]
ただし、米国研究は「摂取量の第4四分位と第1四分位」を比較し、韓国研究は「食事全体の摂取重量に占める割合が1ポイント増えるごと」に解析しています。食品の配合、1回量、食べ方、摂取頻度、生活習慣、解析方法が異なるため、両研究の数値は直接比較できません。 [1],[7]

図2 韓国成人コホート:食事全体の摂取重量に占める各食品・食品群の割合が1ポイント増加するごとの2型糖尿病発症リスク [7]
■ 甘いものでは「何を、どのように摂るか」が重要
この研究から実生活に生かせる最も重要な点は、アイスクリームを積極的に食べることではありません。
糖分やエネルギーを含む飲料は短時間に多量を摂取しやすく、糖尿病リスク上昇との関連が比較的一貫しています。のどが渇いたときには、水や無糖のお茶を基本とすることが大切です。
アイスクリームは嗜好品として量と頻度を考えて楽しむ食品であり、健康のために摂取量を増やす根拠はありません。同じ「甘い超加工食品」であっても、液体か半固形か、摂取速度、食品の構造、含まれる栄養素や食物繊維、そしてそれを選ぶ人の健康状態によって、研究結果は異なります。
| <TAKE-HOME MESSAGE> 「超加工食品」「甘い食品」と一括りにせず、原材料表示と栄養成分表示を確認して選びましょう。 ✓ 飲み物は、水または無糖のお茶を基本にする ✓ マーガリンやショートニングという名称だけで判断せず、トランス脂肪酸の含有量が表示・公表されている場合は、より少ない製品を選ぶ。「部分水素添加油脂」が使われている製品は、なるべく控える [8] ✓ 食塩相当量が少なく、砂糖・果糖ぶどう糖液糖・濃縮果汁などが原材料の上位にないものを選ぶ ✓ 全粒穀物を使用し、食物繊維が多いものを選ぶ ※ 上記は本研究が直接検証した基準ではなく、一般的な食品選択の目安です。部分水素添加油脂を使っていない食品でも、天然由来などのトランス脂肪酸を少量含む場合があります。 |
■ 参考文献(文献名をクリックすると原文を開きます)
| 研究結果を読む際の注意 本稿で紹介した研究はいずれも観察研究です。食品摂取と糖尿病発症の「関連」を示しますが、特定の食品が発症を直接増減させることを証明するものではありません。 |
(文責:医療法人寿里会 すぎもと内科・糖尿病内科クリニック 杉本 一博)