(NEW)食べたカロリーだけでは決まらない~体重増加への影響とは?~
「同じ500 kcalなら、体重への影響も同じ」なのでしょうか。
体重の増減を決める基本は、長期的なエネルギー収支です。
ただし、食品表示のカロリーが、すべて同じ割合で吸収され、同じ量だけ体内に残るとは限りません。
| <このコラムの結論> ● カロリーは、肥満管理の基本となる大切な指標です。 ● 同じ表示カロリーでも、食品の形や加工方法によって、体内へ取り込まれる正味エネルギーは変わることがあります。 ● 同じ食品を食べても、吸収されずに便や尿へ出るエネルギーには個人差があります。 ● 食事誘発性熱産生(DIT)は、たんぱく質で高く、唐辛子の辛味成分カプサイシンによる増加は小さく一時的です。 ● ただし、超加工食品が太りやすい最大の理由は、食べ過ぎを起こしやすいことです。 |

図1 同じ表示カロリーでも、体内に残る正味エネルギーは異なり得る(当クリニック作成)
◆ 食品表示の500 kcalが、すべて体内に残るわけではない
食べたエネルギーの一部は消化・吸収されず、便として体外へ出ます。吸収された後にも、栄養素を運ぶ、作り替える、貯蔵するといった過程でエネルギーが消費されます。
食物繊維などは大腸に届き、腸内細菌によって発酵されます。その一部は便やガスなどとして失われますが、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の一部は吸収され、体のエネルギー代謝に影響します。つまり、腸内細菌に使われたエネルギーが、すべて失われ体に作用しないわけではありません。 [1]
◆ 同じ食品でも、体内へ残るエネルギーには個人差がある
健康成人12人が、成分を一定にした同じ栄養調整バーを食べ、便と尿をすべて集めてエネルギー量を測定した研究があります。摂取したエネルギーのうち、便と尿へ出た割合は平均10.48%でした。
| 平均排泄率 10.48% 便7.95%+尿2.52% | 個人ごとの幅 6.34~15.07% 同じ規格の食品 | 最大の個人間差 209.64 kcal/日 体内に残る量の差 |
この結果から、同じ食品を食べても、実際に体内へ残る「代謝可能エネルギー」には一定の個人差があると考えられます。 [2]
| 「代謝可能エネルギー」とは? |
| 食べたエネルギーから、便や尿へ出たエネルギーを差し引いたものです。体内で実際に利用できる正味エネルギーの目安になります。 |
ただし、対象者は12人と少なく、結果をすべての食品やすべての人にそのまま当てはめることはできません。また、便に含まれるエネルギーのすべてが「吸収されなかった食べ物」ではなく、腸内細菌や腸管由来の成分も含まれます。 [1]、[2]
● 個人差に関係すると考えられる要因
次の項目は、一般に、消化・吸収・排泄の個人差を考えるときに確認される要因です。ただし、上記の12人の研究で一つずつ証明されたものではありません。
| ①消化する力 消化酵素や胆汁の分泌 | ②腸を通る速さ 腸管通過時間、便の状態 |
| ③腸内細菌 腸内細菌の種類や発酵する力 | ④食べ方と食品の形 咀嚼の程度、粒子の大きさ、加工度 |
| ⑤腸や体の状態 腸管粘膜、年齢、胃腸の病気 | ⑥食事への適応 直前までの食事内容や食物繊維量 |
◆ 食べる量より、食品の種類のほうが吸収率に影響しやすい場合がある
2026年の系統的レビューでは、過食すると便へ出るエネルギーの「量」は増えるものの、食べた量に対する吸収率はおおむね保たれていました。一方、食物繊維が多い食品や、丸ごとのナッツなどでは、体内へ取り込まれる率が低くなる傾向が、より一貫してみられました。 [3]
| 大切な点 |
| 「たくさん食べれば、吸収しきれず便に出る」とは期待できません。健康な腸管は、通常の範囲では摂取量が増えても、その多くを吸収します。 |
◆ 食物繊維が多い食品では、便中へ失われるエネルギーが増えることがある
成人6人を対象に、穀類由来の低食物繊維食と高食物繊維食を比べた研究では、高食物繊維食で便の量と便中エネルギーが増えました。総エネルギー損失は253 kcal/日から409 kcal/日へ増え、たんぱく質や脂質から利用できるエネルギーも低下しました。 [4]
| 比較項目 | 低食物繊維食 | 高食物繊維食 |
| 食物繊維 | 19.7 g/日 | 48.3 g/日 |
| 便へのエネルギー損失 | 253 kcal/日 | 409 kcal/日 |
| 研究を読むときの注意 |
| 両方の食事で総摂取カロリーが完全に同じだったわけではなく、対象者6人の古い小規模研究です。高食物繊維食で吸収されずに便中に排泄されるエネルギーが増える仕組みを示す研究として読む必要があります。 |
● 丸ごとのナッツとペーストでは、利用できるカロリーが違う
ナッツの脂質は、植物の細胞壁の中に閉じ込められています。丸ごとに近いほど、消化酵素が脂質へ届きにくく、一部が吸収されず便へ出ます。刻む、加熱する、ペーストにするなど、食品の構造を細かく壊すほど、吸収され利用できるエネルギーが増える傾向があります。 [5]
代表例がアーモンドです。健康成人18人で、自然な状態の丸ごとのアーモンド、ロースト、刻んだもの、アーモンドバターを比べると、実際に利用できるエネルギーに次の差がありました。 [6]
| アーモンドの形 | 実測された代謝可能エネルギー |
| 自然な状態の丸ごとのアーモンド | 4.42 kcal/g |
| ローストした丸ごとのアーモンド | 4.86 kcal/g |
| 刻んだアーモンド | 5.04 kcal/g |
| アーモンドバター | 6.53 kcal/g |
丸ごとのアーモンドでは、硬い細胞壁の中に脂質が残るため、食品成分表から予測されるより吸収量が少なくなりました。一方、アーモンドバターでは、ほぼ予測どおりのエネルギーが利用されました。 [6]
| <注意点> |
| この結果を、すべての自然食品と加工食品へそのまま当てはめることはできません。 食品構造による差が特に分かりやすいのは、細胞壁の中に脂質が閉じ込められているナッツ類です。 |
| <噛まずに飲み込めばよい?> ここでいう「食品の構造を細かく壊す」とは、主に加工や調理によって食品全体を細かくすることです。「あまり噛まずに飲み込めば、吸収されるカロリーが減って太りにくい」という意味ではありません。 健康な若年男性19人の試験では、千切りキャベツを噛んで食べた場合、ピューレ状にして噛まずに摂った場合より、食後45~90分のGLP-1濃度が高くなりました。GLP-1は、食欲や満腹感の調節に関わる腸ホルモンです。 [7] また、正常体重・過体重・肥満の成人45人の試験では、1口あたりの咀嚼回数を普段の1.5倍、2倍に増やすと、食事量がそれぞれ9.5%、14.8%減少しました。 [8] 研究数はまだ限られますが、吸収を減らす目的で噛まずに食べることは勧められません。肥満管理では、むしろよく噛み、ゆっくり食べて、食べ過ぎを防ぐことが大切です。 |
▲ 消化や代謝に使われるエネルギーも、食品によって違うことがある
食事をすると、消化、吸収、運搬、代謝、貯蔵のためにエネルギーを使います。これを「食事誘発性熱産生(DIT)」と呼びます。
17人を対象とした小規模研究では、同じカロリーのサンドイッチでも、全粒穀物パンとチェダーチーズの食事は、精製穀物の白パンとプロセスチーズの食事より、食後のエネルギー消費が大きくなりました。 [9]
若い女性8人が、エネルギー量と三大栄養素をそろえた2種類の朝食を摂った研究では、栄養成分を調整した食事代替バー・飲料の食事は、自然食品の食事より、食後120分の食事誘発性熱産生が平均約7.8%高くなりました。この研究では、自然食品のほうがDITが低く、食事代替食のほうがDITが高いという逆の結果になりました。ただし、対象者8人の1回の食事による短期研究であり、長期的な体重への影響は分かりません。 [10]
● DITを最も左右するのは、辛さより栄養素の種類
DITの大きさを最も左右するのは、食品の「辛さ」よりも栄養素の種類です。一般に、たんぱく質は炭水化物や脂質よりDITが高くなります。 [11]
| たんぱく質 | 炭水化物 | 脂質 | 通常の混合食 |
| 20~30% | 5~10% | 0~3% | 約10%(5~15%) |
● 唐辛子のカプサイシンはDITを一時的に高めるが効果は高くない
唐辛子に含まれるカプサイシンは、辛味刺激と交感神経系を介して、食後の熱産生や脂肪酸化を一時的に高める可能性があります。日本人女性13人の試験では、約450 kcalの高脂肪食または高炭水化物食に赤唐辛子10 gを加えると、DITと脂肪酸化が増加しました。 [12]
一方、健康な成人25人の試験では、赤唐辛子1 gで食後のエネルギー消費と深部体温がわずかに上昇しましたが、食欲への影響は日頃から辛い食品を食べるかどうかで異なりました。いずれも1回の食事を調べた小規模な短期研究であり、日常的な摂取によって長期的に体重が減ることを示したものではありません。 [13]
| 研究結果は一方向ではありません |
| 「加工食品は消化しやすいので、必ずDITが低くなる」とは言えません。DITは、加工度だけでなく、たんぱく質・脂質・炭水化物の割合、食物繊維、食事量、食品の形などにも左右されます。 また、カプサイシンによる熱産生の増加は小さく一時的です。油の多いカレー、麻婆豆腐、辛いラーメンなどでは、辛さによる消費増加よりも総摂取カロリーの影響が大きくなります。したがって、「辛い料理なら太りにくい」とは言えません。 |
■同じ設定カロリーでも、超加工食品は太りやすいのか?
2025年の若年男性を対象とした短期試験では、摂取カロリーと三大栄養素をそろえても、超加工食品(UPF)中心の期間で体重や体脂肪が増えやすい傾向が示されました。 [14]
ただし、比べたのは「同じ食品の加工前と加工後」ではありません。食物繊維、脂肪酸の種類、食品構造、塩分、水分、添加物などは完全に同じではなく、研究期間も短期間です。したがって、「UPFは同じカロリーでも必ず太る」とまでは言えません。 [14]
| 現時点で言えること |
| 設定上のカロリーだけでは説明できない差が生じる可能性はあります。しかし、その理由や長期的な影響は、まだ十分に確立していません。 |
■ 最大の理由は、やはり「食べ過ぎやすいこと」
UPFと体重増加の関係で、最も強い証拠があるのは、本人が気づかないうちに総摂取カロリーが増えることです。
| 米国NIHの入院試験 ● 20人・各2週間 ● UPF期間は1日平均508 kcal多く摂取 ● 2週間で平均0.9 kg増加 ● 非加工食では平均0.9 kg減少 [15] | 日本人男性の試験 ● 9人・各1週間 ● UPF期間は1日平均813.5 kcal多く摂取 ● 非UPF期間より体重が1.1 kg多く増加 ● 1 kcalあたりの咀嚼回数も減少 [16] |
UPFは、軟らかく、少ない咀嚼で速く食べられるものが多いため、満腹になる前に多くのカロリーを摂りやすくなります。現在最も確立している説明は、「UPFは同じカロリーでも必ず太る」ではなく、「UPFは自然に食べ過ぎを起こしやすい」というものです。 [15]、[16]
■ 肥満管理では「食品の質」と「置き換え」が重要
ナッツやアボカドは、食品成分表上はエネルギー密度の高い食品です。しかし、ランダム化比較試験をまとめたメタ解析では、ナッツやアボカドを食事に取り入れても、体重や体脂肪が増えるという明確な結果は認められていません。 [17]、[18]
米国心臓協会(AHA)の2026年の食事指針も、ナッツ、種子、アボカド、非熱帯性の液状植物油などに含まれる不飽和脂肪を、バター、脂身の多い肉など飽和脂肪の多い食品の代わりに選ぶことを勧めています。したがって、これらを「カロリーが高い食品」として一律に制限するのではなく、菓子類、加工肉、バターなどとの置き換えによって、食事全体の質を高めることが大切です。 [19]

まとめ
体重の増減を決める基本は、長期的なエネルギー収支です。
一方、「何を選び、何と置き換えるか」によって、食べる量、食べる速さ、満腹感、消化吸収率、便中へ失われるエネルギー、食後のエネルギー消費が変わります。
| <無理なく続ける4つの工夫> ● 野菜、豆類、全粒穀物、魚、大豆製品など、加工度の低い食品を食事の基本にする。 ●ミキサーにかけたりペースト・ピューレにしたりせず、丸ごとの食品や噛み応えのある食品を選び、よく噛んでゆっくり食べる。 ● たんぱく質と食物繊維を取り、満腹感を得やすくする。 ●不飽和脂肪酸の多いナッツやアボカド、オリーブ油を、飽和脂肪酸のベーコンなどの加工肉やラードの代わりに取り入れる。 |
食べる量やカロリーだけを見るのでもありません。「何を、どのような形で、何と置き換え、どのくらいの速さで食べるか」まで考えることが、肥満管理にとって大切です。
■ 参考文献
本文中の文献番号と「PubMed」をクリックすると、論文情報へ移動します。
1.Cummings JH, Macfarlane GT. Role of intestinal bacteria in nutrient metabolism. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 1997;21:357-365. doi:10.1177/0148607197021006357. PubMed
2.Bao R, et al. Standardized assessment of energy excretion in healthy adults: a novel methodology. Am J Clin Nutr. 2025;121:470-477. doi:10.1016/j.ajcnut.2024.12.016. PubMed
3.Yoshimura E, et al. Digestible and Metabolizable Energy Intake in Humans: a Systematic Review. Adv Nutr. 2026;17:100597. doi:10.1016/j.advnut.2026.100597. PubMed
4.Wisker E, Maltz A, Feldheim W. Metabolizable energy of diets low or high in dietary fiber from cereals when eaten by humans. J Nutr. 1988;118:945-952. doi:10.1093/jn/118.8.945. PubMed
5.Nikodijevic CJ, et al. The Metabolizable Energy and Lipid Bioaccessibility of Tree Nuts and Peanuts: A Systematic Review. Adv Nutr. 2023;14:796-818. doi:10.1016/j.advnut.2023.03.006. PubMed
6.Gebauer SK, et al. Food processing and structure impact the metabolizable energy of almonds. Food Funct. 2016;7:4231-4238. doi:10.1039/C6FO01076H. PubMed
7.Kamemoto K, et al. Effect of vegetable consumption with chewing on postprandial glucose metabolism in healthy young men: a randomised controlled study. Sci Rep. 2024;14:7557. doi:10.1038/s41598-024-58103-w. PubMed
8.Zhu Y, Hollis JH. Increasing the number of chews before swallowing reduces meal size in normal-weight, overweight, and obese adults. J Acad Nutr Diet. 2014;114:926-931. doi:10.1016/j.jand.2013.08.020. PubMed
9.Barr SB, Wright JC. Postprandial energy expenditure in whole-food and processed-food meals. Food Nutr Res. 2010;54:5144. doi:10.3402/fnr.v54i0.5144. PubMed
10.Mohr AE, et al. Lower postprandial thermogenic response to an unprocessed whole food meal compared with an isoenergetic meal replacement in young women. Nutrients. 2020;12:2469. doi:10.3390/nu12082469. PubMed
11.Westerterp KR. Diet induced thermogenesis. Nutr Metab (Lond). 2004;1:5. doi:10.1186/1743-7075-1-5. PubMed
12.Yoshioka M, et al. Effects of red pepper added to high-fat and high-carbohydrate meals on energy metabolism and substrate utilization in Japanese women. Br J Nutr. 1998;80:503-510. doi:10.1017/S0007114598001597. PubMed
13.Ludy MJ, Mattes RD. The effects of hedonically acceptable red pepper doses on thermogenesis and appetite. Physiol Behav. 2011;102:251-258. doi:10.1016/j.physbeh.2010.11.018. PubMed
14.Preston JM, et al. Effect of ultra-processed food consumption on male reproductive and metabolic health. Cell Metab. 2025;37:1950-1960.e2. doi:10.1016/j.cmet.2025.08.004. PubMed
15.Hall KD, et al. Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain: An Inpatient Randomized Controlled Trial. Cell Metab. 2019;30:67-77.e3. doi:10.1016/j.cmet.2019.05.008. PubMed
16.Hamano S, et al. Ultra-processed foods cause weight gain and increased energy intake associated with reduced chewing frequency. Diabetes Obes Metab. 2024;26:5431-5443. doi:10.1111/dom.15922. PubMed
17.Nishi SK, et al. Are fatty nuts a weighty concern? A systematic review and meta-analysis and dose-response meta-regression of prospective cohorts and randomized controlled trials. Obes Rev. 2021;22:e13330. doi:10.1111/obr.13330. PubMed
18.Conceição AR, et al. Can avocado intake improve weight loss in adults with excess weight? A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Res. 2022;102:45-58. doi:10.1016/j.nutres.2022.03.005. PubMed
19.Lichtenstein AH, et al. 2026 Dietary Guidance to Improve Cardiovascular Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2026. doi:10.1161/CIR.0000000000001435. PubMed
(文責:医療法人寿里会すぎもと内科・糖尿病内科クリニック杉本一博)