(NEW)機能性表示食品の宣伝マジック――「特定保健用食品(トクホ)」との違いを正しく知ろう
■「内臓脂肪を減らす」「血糖値を下げる」――その効果は本当に証明されていますか?
「内臓脂肪を減らす」「食後の血糖値の上昇を抑える」「悪玉コレステロールを下げる」「高めの血圧を下げる」「ヘモグロビンA1cの低下をサポートする」。テレビCMやインターネット広告、食品パッケージには、こうした魅力的な言葉が並んでいます。
こうした商品の中には「機能性表示食品」と表示されたものが数多くあります。毎日食べたり飲んだりするだけで健康状態が改善するのではないか、と期待する方も多いでしょう。
しかし、機能性表示食品には、限られた数の研究や小規模な臨床試験を根拠として健康への効果を表示しているものが少なくありません。 メーカーなどが関与した研究が主な根拠となり、独立した研究による再検証が十分とはいえない場合もあります。
今回は、健康食品の制度の違いと、広告に潜む「宣伝マジック」を医学的な視点から考えます。
1.「健康食品」「サプリメント」「保健機能食品」はどう違う?
「健康食品」とは、健康の維持・増進に役立つことをうたって販売されたり、そうした効果を期待して摂取されたりする食品の総称です。法律上の明確な定義はありません。「サプリメント」も法令上の独立した食品区分ではなく、一般には錠剤やカプセルなどで成分を補う食品を指します。
これに対し、国の制度に基づいて機能を表示できる「保健機能食品」は、次の3種類に分かれます。[1]
① 特定保健用食品(トクホ): 国が製品ごとの有効性と安全性を審査し、表示を許可する食品です。
② 機能性表示食品: 事業者が根拠資料を届け出て、事業者の責任で機能性を表示する食品です。国が個々の商品の有効性を審査して許可したものではありません。
③ 栄養機能食品: ビタミンやミネラルなど、国が定めた栄養成分の含有量などの基準を満たし、その栄養素の働きを表示できる食品です。国への個別の届出や許可は必要ありません。
栄養機能食品は、いわゆるサプリメントに近いものと考えられますが、すべてのサプリメントが栄養機能食品ではありません。 また、錠剤・カプセルだけでなく飲料などにもあります。
| 栄養成分 | 表示できる働きの例 |
| ビタミンC | 皮膚や粘膜の健康維持を助け、抗酸化作用を持つ |
| ビタミンD | カルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける |
| カルシウム | 骨や歯の形成に必要な栄養素 |
| 鉄 | 赤血球を作るのに必要な栄養素 |
栄養機能食品が示すのは、基本的に「栄養素が体内で果たす働き」です。 例えば「カルシウムは骨や歯の形成に必要」と表示されていても、その商品で骨粗鬆症が予防できると証明されたわけではありません。
2.トクホと機能性表示食品の決定的な違い
最も大きな違いは、国がその商品を個別に審査しているかどうかです。[2]
| 比較項目 | トクホ | 機能性表示食品 |
| 制度 | 国による個別許可制 | 事業者による届出制 |
| 有効性・安全性 | 国が個別審査 | 事業者が評価・届出 |
| 最終製品の臨床試験 | 原則として必要 | 成分の研究レビューでも可 |
| 表示 | 国が許可した内容 | 届出内容に基づく |
| 識別方法 | 許可マーク | 届出番号 |
機能性表示食品の届出番号があることは、国が商品の健康効果を認定したことを意味しません。 一方、トクホも医薬品ではなく、誰にでも大きな効果が得られると保証されたわけではありません。
3.なぜ最近、トクホの新製品が減ったのでしょうか?
2015年4月に機能性表示食品制度が始まって以降、トクホの年間許可件数は大きく減少しました。2015年度は104件、2020年度は8件、2021年度は16件でした。2020年度は2015年度比で約92%減です。なお、許可件数には再許可などが含まれ、全件が新製品の発売を示すわけではありません。[3]

図1.トクホの年間許可件数の推移(2015・2020・2021年度)。出典:消費者庁・消費者委員会資料、日本学術会議提言をもとに作成。
トクホは原則として最終製品を用いた臨床試験などが必要で、国の個別審査を受けます。一方、機能性表示食品では一定の要件のもとで既存論文の研究レビューを根拠にできるため、開発費用や時間の違いが商品開発の方向を変えた一因と考えられます。日本学術会議も、トクホの商品化にかかる時間・費用など制度上の課題を指摘しています。[4]
ただし、「制度開始後に減少した」という時間的な関係だけから、減少のすべてが制度変更によると証明されたわけではありません。
4.「科学的根拠」の約4割は、わずか1報の論文による研究レビュー
2024年に公表された鈴木らの調査では、2022年4~8月に届け出られた398製品・611件の機能性表示を検討しました。効果の根拠として、過去の論文を集めて評価する「研究レビュー」が広く使われていました。そのうち39%(206件)は、採用した論文がわずか1報だけでした。[5]
さらに、採用論文が1報だけの研究レビューでは、その論文の94%に、食品の販売会社や原料供給企業の社員など、商品と利害関係があると考えられる著者が含まれていました。一方、67%では、採用論文の著者と研究レビューをまとめた担当者の所属が一部共通していました。94%と67%は異なる観点から調べた数字です。
研究レビューに採用された個々の臨床試験の参加人数は、中央値がわずか38人(平均56人、最少5人)でした。これは398製品すべての試験をまとめた参加人数の中央値ではありません。また、参加者数の記載には、登録時の人数と最終解析人数が混在している可能性があると著者らは説明しています。
調査された研究レビュー(統計的に結果を統合した解析も含む)593件のうち373件(62.9%)では、採用された全論文に、販売会社や原料供給企業などとの利害関係が疑われる著者が含まれていました。企業の関与自体が研究の誤りを意味するわけではありませんが、独立した研究者による再検証が重要です。
掲載誌にも偏りがあり、採用論文の54%は、国際的な医学論文検索サービス「PubMed(パブメド)」の収載対象外の雑誌に掲載されていました。ただし、検索サービスに収載されていないことだけで研究の質が低いとは判断できません。この調査は、雑誌のインパクトファクター(引用の多さを示す指標)や、個々の研究の学会発表歴を体系的に評価したものではありません。
また、臨床試験への参加者がメーカーの社員や家族、知人であったかどうかも、今回の調査からは判断できません。研究の信頼性を考える際には、参加者の募集方法、研究の事前登録、企業との関係、独立した追試の有無も確認する必要があります。
研究が1報だけだからといって「効果がない」とは断定できません。しかし、独立した研究による再現性、研究デザインの質、効果の大きさ、利益相反を踏まえて検証する必要があります。「論文がある」と「有効性が十分に確立された」は同じではありません。
この調査は2022年の届出資料に関するものであり、現在の全商品が同じ状況という意味ではありません。

図2.機能性表示食品の科学的根拠に関する調査結果。出典:鈴木一平ほか,食品衛生学雑誌 2024;65(2):31–39。
5.宣伝マジック①:「成分の効果」が「商品の効果」に見える
機能性表示食品では、最終製品そのものを用いた試験の代わりに、機能性関与成分についての研究レビューを根拠にできる場合があります。研究で使った食品と販売商品とで、製造方法や成分組成などが異なる可能性もあります。
「この成分に効果が報告されている」と「この商品を摂取すれば同じ効果が得られる」は、慎重に区別する必要があります。
6.宣伝マジック②:わずかな効果を大きく見せるグラフ
身近な例が、MI-2乳酸菌を使った「ヘモグロビンA1c対策ヨーグルト」です。当クリニックでは2026年6月16日のコラムで、宣伝される「12週間でHbA1cが0.1%低下」という数値の意味を検証しました。[6]
根拠となった12週間の無作為化比較試験では、MI-2乳酸菌入りヨーグルト群のHbA1cは5.86%から5.74%(−0.12%ポイント)へ低下しました。しかし、通常ヨーグルト群も5.85%から5.78%(−0.07%ポイント)へ低下しており、両群の平均変化量を単純に差し引くと約0.05%ポイントです。[7] これは試験の群平均値の単純差であり、個人ごとの効果や統計モデルで推定した群間効果を示す数値ではありません。
さらに、この試験では両群とも体重と血圧が上昇しており、HbA1cの小さな低下をもって代謝状態全体が改善したとは判断できません。糖尿病の発症や合併症を減らす効果も、この試験からは示されていません。[6][7]
広告のグラフでは縦軸を狭く設定することで、わずかな低下が大きく見えることがあります。軸の拡大自体が不正確なのではありませんが、消費者には「摂取前後の変化」と「対照群との差」を明確に区別して示す必要があります。適正広告自主基準でも、誤認を招く極端な軸の変更などを避けるよう求めています。[8]
詳しい数値、8週時点の推移、体重・血圧・インスリンに関する検討は、当クリニックの既掲載コラム「HbA1c低下をサポートする?『MI-2乳酸菌』とは?」で紹介しています。[6]
7.宣伝マジック③:「統計学的に有意」は「健康への大きな効果」とは違う
統計学的に有意な差があっても、実際の健康への効果が十分大きいとは限りません。HbA1cや内臓脂肪、血圧などがわずかに変化しただけで、糖尿病や心血管疾患の発症予防が示されたことにはなりません。
何と比較してどの程度改善したのか、その効果は再現されるのか、病気の発症や合併症の減少につながるのかという視点が重要です。
8.健康への不安を刺激する広告にも注意
「内臓脂肪が気になる方へ」「高めの血糖値が心配な方へ」などの表現は、健康への関心や不安に訴えます。必要以上に不安をあおり、成功体験、専門家の推薦、印象的なグラフなどによって研究結果以上の効果を期待させる広告には注意が必要です。
健康食品の広告には、確認された効果と、その科学的根拠の限界を正確に伝える姿勢が求められます。
9.医薬品は避けるのに、健康食品には高額な費用をかける?
日常診療では、考えさせられる場面に出会うことがあります。血圧、コレステロール、血糖値などの改善が十分でなく、医学的に必要と判断して薬剤の追加を提案しても、「薬はこれ以上増やしたくない」「副作用が心配」と希望されない方がいらっしゃいます。
ところが、そのような方が、知人に勧められた高額な健康食品やサプリメントを購入し、毎日欠かさず摂取していることがあります。さらに、次の診察で検査値が改善していないことをお伝えすると、「毎日飲んでいるのに、どうして数値が下がらないのか?」と怒りだす方さえいます。
もちろん医薬品にも副作用があります。薬剤を追加するかどうかは、期待できる効果と副作用などのリスクを説明し、ご本人と医療者が相談して決めるべきことです。しかし、なぜ十分な臨床試験で有効性が確認されている医薬品には慎重なのに、効果の検証が不十分な健康食品には大きな期待を寄せてしまうのでしょうか。
知人の体験談は身近で説得力があるかもしれません。しかし、その方の検査値が改善したとしても、それが健康食品の効果によるものとは限りません。食事や運動、体重の変化、自然な数値の変動など、ほかの要因も考えられます。「自然由来」「食品だから安心」といった印象も、有効性や安全性の保証にはなりません。
一方、適切に処方される降圧薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬の中には、検査値を改善するだけでなく、心筋梗塞、脳卒中、腎臓病などのリスクを減らす効果が、大規模な臨床試験で確認されているものがあります。ただし、すべての薬剤に同じ効果があるわけではなく、病状に応じた選択が必要です。
健康食品の利用自体を否定するものではありません。しかし、口コミや魅力的な宣伝文句を医学的な根拠よりも優先すると、必要な治療が遅れるおそれがあります。毎月高額な費用をかけても期待した検査値の改善が得られないのであれば、健康面でも経済面でも不利益になりかねません。
「この食品の効果は誰がどのような研究で確かめたのか」「知人に効いたという話と、自分にも効くという根拠は同じなのか」「必要な治療を健康食品に置き換えていないか」を考えてみてください。大切なのは、薬か食品かという名称ではなく、有効性と安全性がどの程度確かめられているかです。
10.購入前に確認したいこと
・何人を対象とし、どのような方法で確認された効果でしょうか? 募集方法や企業との関係も確認されていますか?
・独立した複数の研究で同じ効果が再現されていますか?
・対照群との差は、実際にはどの程度ですか?
・短期的な指標の改善にとどまらず、長期的な健康効果が示されていますか?
・研究対象と自分の健康状態は一致していますか?
・継続的な費用に見合う価値があるでしょうか?
判断に迷う場合は医師や管理栄養士などに相談してください。
11.本当に健康を守るのは、魅力的な宣伝文句ではありません
糖尿病や肥満症の予防では、適切な食事、継続的な身体活動、体重管理などの生活習慣改善が基本です。必要に応じて、科学的根拠に基づく医薬品も重要になります。健康食品だけでそれらの代わりになるわけではありません。
「科学的根拠がある」ことと、その効果が確実で十分大きいことは同じではありません。 広告の見た目や宣伝文句だけでなく、根拠の質と実際の効果量を見極めることが、健康を守る第一歩です。 企業には研究結果を誇張しない説明が求められますが、私たち消費者にも、口コミや広告を鵜呑みにせず、科学的根拠を確かめる姿勢が必要です。
■参考文献・資料
4.日本学術会議.我が国の機能性食品制度に関わる課題とその対応(2026年)。
5.Suzuki I, et al. 食品衛生学雑誌.2024;65(2):31–39.
6.すぎもと内科・糖尿病内科クリニック.HbA1c低下をサポートする?「MI-2乳酸菌」とは?(2026年6月16日)。 原典を見る
7.Toshimitsu T, et al. Effects of 12-Week Ingestion of Yogurt Containing Lactobacillus plantarum OLL2712 on Glucose Metabolism and Chronic Inflammation in Prediabetic Adults. Nutrients. 2020;12:374. 原典を見る
(文責:医療法人寿里会すぎもと内科・糖尿病内科クリニック杉本一博)